双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

紳士ごのみ

|モノ|

以前に引き受けた野暮用を、新年には決して
持ち越したく無いので、昼近くに寝床を出てから
軽い昼食を済ませ、のろのろと取り掛かる。
もっと早くにやっつけてしまえば良かったのだが、
何せ気乗りがせねば、物事に取り掛かれぬ質故、
こんな年の瀬まで、ひっぱってきてしまった。
三時間程で集中力が切れ、残す一つはまた明日。
とは云え、八割方が片付いてほっとする。


表がすっかり暗くなった頃。煙草を切らして居たのに気付く。
コートを羽織り、ハンチング帽を引っつかんで、外へ。
つうと冷たい空気が、ぼんやりの頭に心地良い。
そう云えば、この帽子とは、もう随分と長い付き合い。
十五年程前、初めての海を渡った旅で訪れた、
ニュー・オリンズの帽子店で買い求めたのだったっけ。
帽子は昔から好きなのだけれど、中でもとりわけ
ハンチング帽が好きだ。ハンチング帽にも色々在るが、
選ぶのはツイード地の、仕立ては六枚か八枚はぎ。
昔風の形と佇まいのが好みだから、今様の店では
殆ど見掛けることは無く、大抵の場合、昔ながらの
紳士用帽子店にて買い求めたりする。*1
そろそろ、ハリスツイード地のが欲しいなぁ。
あのタグも素敵だものなぁ。格子柄が良いかしら・・・。
そんなことを考えながら、すたすた歩いて居たら、
何故だか店を通り過ぎて、郵便局の辺りまで来てしまった。
誰も見てなど居らぬのに、頭を掻き掻き、来た道戻る。

*1:昔の映画などでは、開襟シャツの若い刑事さんがかむって居ることが多い。

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