双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

飛躍と私

|モノ|


功夫好きの方ならご存知かと思うが、中国には『飛躍(フェイユエ)』と云う、有名な国民的武術シューズが在る。昔ながらのキャンバス生地にゴム底の、素朴な懐かしいつくりで、武術は元より(因みに、少林寺の修行僧の皆さんも履いて居る)、かつては小中学校の運動靴としても使われたとのこと。日本で云えば、差し詰め”アサヒシューズ”や”月星シューズ”みたいなものだろか。

(懐かしさと野暮ったさが味の在る『飛躍(フェイユエ)』シューズ。軽いヨ!)


数年前、知人に頼み込んで上海土産に買って来て貰って以来、細身で底の固いコンバースよりも、私にはこちらの方が断然足に合って履き易いため、普段の仕事靴として愛用して居たのだけれども*1、とうとう踵部分が草臥れて破れてしまい、功夫服の購入でお馴染みの、中国武術用品店に取り扱いが在るのが分かって居たので、そちらで二足目を購入した次第。白はどうしても汚れ易いため、今回は黒にした。
ぱっと見こそ安っぽ...もとい、簡素であるが(笑)、否々、侮る無かれ。天然ゴムの入った靴底は非常にしなやかで、普通のスニーカーと比べると随分薄いのだけれども、厚みが絶妙と云うのか。本来の目的である武術の動きに大切な、足指・足裏で床(地面)を捉える感覚がちゃんと感じられるにも拘わらず、是又絶妙な塩梅の中敷クッションのお陰で、思いの外疲れ難く、軽いのに安定感も在る、と安価な割になかなかの代物なのである。
それと。些事ながらも、この手の靴の履き心地には意外に重要な、甲の”ベロ”。このシューズでは、甲の靴紐を通す部分とベロの下にもう一層在って、何と云おうか。二重(三重?)構造のよなつくりとなって居り*2、兎に角まぁ、それによって着脱がスムースな上、ベロが中に入り込む、ズレると云った不快感も皆無なのだ。いやはや。安いのに、偉い(笑)!



【左】見よ!この柔軟さ。ゴム底とシューズ生地とを圧縮一体化する製法なので、見た目のチープさに似合わず、結構丈夫です(笑)。
【右】でもって、こんなくたくたの簡素な袋に入って居て、それがまた良いじゃないか、と(笑)。尤も、近頃じゃ立派な靴箱入りらしいのだが、私の購入先では未だ懐かしい紙袋だったヨ。


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さて。余談だが、電脳網でこのシューズを調べると云うと、何故だか今様のアパレル系の店がわんさか引っ掛かって来る。はてさて?と不思議に思ったら、それもその筈。どうやら近年、是が実にオサレ靴”FEIYUE”として世に流行して居るのだとか(笑)。何でも仏蘭西資本が入って、オサレ路線へ舵を切り直したのらしく、続々とデザインの小洒落たのが作られて居る模様*3で、いやはや。世の中ってのは、つくづく解せぬものだわねぇ...。

*1:因みに太極拳の稽古では、同じく布製だが『双星』と云うメーカーのシューズを使用。

*2:履き口がV字型の功夫シューズが在るけれど、丁度あの上にベロが付いて、更にその上へ甲の部分を重ねて、両側から足を包んだよなつくり、と云えば良いのかな?

*3:恐らくは、バンズとかコンバース辺りを意識して居るのかな。私は昔ながらのこっちのが良いので、食指動かず(笑)。

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