双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

Say goodbye and say hello

|若旦那|



チビ猫ピピンが、拙宅に暮らし始めて三日。生い立ちや境遇等々を考えれば、人馴れして新たな環境に落ち着くまでには、多少なりと時間がかかるかも知れぬなぁ、と心配して居たのだけれど、こちらの懸念など何処吹く風。拍子抜けする程の堂々とした馴染みっぷりは、着いた早々から。それが二日三日と日の経つ毎に、益々顕著となってきた。午後、餌をやりに部屋へゆけば、寝室の方から鈴の音がして、生前の爺様が好んで午後を過ごした寝台の足元のくぼみ。真ん中よりも一寸左寄りの、あの位置に、ちょこなんと香箱組んで、チビがまどろんで居たのだった。皮膚の下から細波のよな震えの上ってくるのを感じるのと同時に、目頭がじわと熱くなった。なあチビ猫。お前は一体、何処の何者か。あたかも、爺様の生前の記憶がインプットされて居る、或いは、爺様の小さなひとかけらを貰ったとでも云うよに。私、Aちゃん、この部屋の様々。どれも皆「知ってるよ」と。

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