双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

ゆれる

|爺猫記|



爺様の病発覚から、もうじきひと月が経とうとして居る。長くはもたぬ腎臓の病だ。気休めと知りつつも、腎兪や百会などのツボを指圧し、やんわりと撫でさすってマッサージを施す。一日の大半を眠って過ごしては居るけれど、たまに起き出しては水を飲んだり、トイレに行ったり、天気の良い午前中には、窓辺に日向ぼっこすることも在る。朝晩は特に外気が冷たくなってきたので、毛布の寝床の中へ湯たんぽを入れてやる。しかしながら餌を殆ど口にせず、徐々に血の気は薄らいできて、体温も下がってきて居る。ああだこうだ抗わずに腹を括り、延命治療もしない、などと格好良く啖呵切ってはみたものの、いざ蓋を開ければ、こうして日に日に弱ってゆく爺様を看ながら、甚だ情けない程、おろおろとゆれて居る始末だ。この体たらくの甲斐性無しめ。

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