双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

五月逍遥

|雑記|


毎月、ひと月ひと月が綱渡りである。
否。綱よりはもうちいと踏ん張りがきくから、板渡りか。
上がったり下がったり止まったり走ったりしながら、何とかかんとか乗り切って、
ようやっと月の最後に「ふう」と溜息とも安堵ともつかぬよな、ひと息をつく。
こうして乗り切って、気持ちを入れ替えて、また新たな月が始まる。
心もとない一枚の長い板の上を、細い車輪でよろよろと渡ってゆく。
同じよに見えて、手応えも方法も毎回違う。いつだって手探り。


ついこないだの気の早い暑さから一転、うすうすと肌寒い五月の終いに、
出して間もない薄手の寝間着が、所在無く椅子の背もたれへ掛かって居る。
猫らは協定を結んだのか、共にくっついて丸く眠る。
洗濯物を畳みながら、ふと、昼に新玉葱を薄くスライスしたときの、
瑞々しくて、さりさりと心地良い包丁の感触を思い出した。
明日はもう六月である。

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