|散輪|
はたと気付けば、もう三か月以上も自転車に乗って居なかった。
花粉の季節が去ってから、乗ろう乗ろうと思いつつも、
乗りたいときには何故だか雨が降ったり、野暮用が舞い込んだりで、
結局は乗れぬままに、ずるずると梅雨へ突入してしまいそうだから、
簡単な掃除と注油だけは先週の暇にしてあったし、空気も入れたし、
午前中に家事などを済ませて、ひょいっとグワイヒア号を走らせる。
今日はまるっきり思い付きで、行先を何処とも決めず、目的も持たず。
自転車から伝わってくる久々の感覚を体全部で受け止めながら、
じりじりと照り付ける日差しの中、川沿いの道を走れば風が心地良く、
走るほどに段々と軽くなっていって、何かが抜けてゆくよな感じだ。
「あっちーなー」と独り言つ。田んぼの中に一羽のシロサギを見た。
市街地へ入って暫し、思い出して大型薬局へ寄り道。
小さい買い物をささと済ませ、その先でもひとつ用足ししてから、
今度は来た道とは別の道を通って、ぐるり遠回りして帰って来た。
凡そ十五キロくらいだろか。ただ、しゃーと走って、
寄り道して、またしゃーと走って。ただ、それだけ。
何にも無い、身軽で気軽の、そう云うのは良いな。