双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

口紅

|モノ| |雑記|


顔立ちの所為*1もあってか、平素殆ど
化粧らしい化粧をしない質ではあるのだが、
目元をちいといじったり、口元へ少しばかりの色味を
足す程度なら、最低限の身嗜みとする。
先日、出先で薬局へ立ち寄った折、ふと現在使って居る、
薄い色付きの薬用リップスティックが、そろそろ
無くなる頃であるのを想い出して、口紅をひとつ
買い求めることにした。しかしどうだろう。
ずらり並んだ見本の色をじいと眺めれば、
ベージュにピンク、レッド系等々。
口紅ひとつをざっと軽く見積もっても十数種類から在る訳で、
其処へリップグロスだ何だのと云う、形態の違いを加えれば、
更に選択肢の幅は増えてゆく。困った。
そもそも、化粧と云うものへの頓着をせずに
長いこと過ごして来た所為で、自身でも如何なる色が合うものか、
とうとう分からぬまま現在に至って居り、結局はいつも
似たよな色ばかり。くすんだ赤味の混じったベージュ系を
選んでしまうと云う、何処かぐずぐずとして煮え切らない
繰り返しの輪の中から、ちいとも抜け出せずに居るのだった。
嗚呼、今日こそは、この悪しき連鎖から抜け出そう。
心ではそう願うも、否、ピンクなんざ断じて在り得んぞ。
パール入りなんてのもいかんな。オレンジ?
何だかナポリタンの跡みたいね…など、はたと気付けば
いつもの消去法に甘んじかねない。商品棚の前に再び直り、
見本を引っこ抜いては戻し、戻しては引っこ抜きしながら、
最後に残った、オリエンタル・レッドなる色を手に取る。
明るい色味の赤ではあるが、試しに親指の付け根へ
ささと落としてみると、懸念して居たよな、
べったりと色の付く類の質感でもないらしいので、おや、と想う。
明るい赤など今まで全く想いもしなかったけれど、
色付きがこのくらい軽ければ、気負わずに使えるし
顔色も良く見えそうだ。終いの終いには、是を買い求めることとし、
何やら達成感にも似た心地となって会計を済ます。
しかし、たったの五百円程度で気分良くなれると云うのも、
我ながらつくづく安上がりな質であるよ…。

*1:迂闊にきっちりした化粧をすると、とんでもなく派手ばってしまう。

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