双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

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眠る猫

…んで、置いておく。 |猫随想| 昨日のこと。冷たい雨降りの水曜日。 出勤すると、剣菱嬢は未だ寝箱の中でお休み中だった。 雨の一日中止みそうもないのを、本能で知って居るのだな。 昼近くになって再び覗いてみると、未だ熟睡の様子で、 午後になっても全く起きる気配が無く、ぴくりとも動かない。 雨がやがて雪へと変わった、午後三時半頃。 ようやっと寝箱から這い出した剣菱は、大きなあくびを一つと、 大きな伸びを一つ。御飯をよそって持って行ったら、 半分寝ぼけ眼のまま、しかしながら威勢良く平…

剣菱の日常

|猫随想| 野ネズミを獲ったり。 陽だまりの茂みで昼寝したり。 そんなお前の日常を、近くで見守ることができるのは、嬉しいよ。

軒下の姐御

|猫随想| 昼頃、郵便屋さんから郵便物を受取ると、 赤ひげ先生の所からの葉書が交じって居た。 ワクチン接種の時期を知らせるものだった*1。 あ、そうか。 剣菱の不妊手術から、もう一年が経つのか。 丁度、去年の今頃だったんだ。 あのすったもんだから、あっと云う間の一年。 ついこないだのよな気がするのにな。 早いものだ。 剣菱嬢は、野良だてらに毛艶宜しく、 小柄ながらも、しっかりとした体躯となり、 前足なんぞ、拙宅の坊ちゃんらよか逞しい。 そして今や、すっかり軒下住まいとなった。…

剣菱からのお歳暮

|猫随想| いつも昼前には現れる筈の剣菱嬢だが、 今日は少し遅れて、午後を過ぎてのご出勤。 軒下で毛繕いなどして居るのが見えたので、 皿に御飯をよそって持って行くと、丁度、 私の通る動線に何やら、茶色っぽい毛玉の 塊のよなものを見付けた。はて、何かしら。 しゃがみ込んで確かめると、実にそれは 小さな小さな野ネズミの死骸なのであった。 たった今、其処の野原で仕留めたのを 持って来たばかりと云った風で、特に目立った 傷も無く、生前の姿のままに息絶えて居るが、 当の剣菱嬢は、是をア…

猫神様四周年

|猫随想| 一日早いけれど、 爺様ことアーロンの命日を、 三色のカーネーションに赤いガーベラと、 一寸だけ高級な白檀のお線香で供養。 四年目の命日は、猫神様四周年。 姿は見えなくとも、猫神様になった爺様が いつも見守って居てくれる気がする。

一年の距離

|猫随想| 季節の巡るのは早いもので、剣菱嬢とも、かれこれ約一年の付き合いとなる。 捕獲云々の辛い時期を共に(?)乗り越え、気付いてみれば、あっと云う間の一年余。その間に、我々の距離は如何程となったのだろか。相変わらず触れぬし、近付けば一旦身構えるが、是は野良としての礼儀であるから、こちらも礼儀として尊重すべき事柄である。そんな彼女も近頃では、こちらの顔を見ると鳴くことを覚え、名の呼びかけにも反応するよになったし、又「小屋=おやつの場」と認識したのか、小屋の扉が開いて居れば、…

剣菱の日曜日

|日々| |猫随想| 開店前の店に行くと、小さな先客が居た。 「あれ、剣菱!」「ニャー」 雨の中やって来たから、軒下には点々と足跡。 しかし、こんな時間に来るのは滅多に無い。 天気の所為なのか。それとも何か、 身辺に変わったことでも在ったのか。 催促されて御飯を出してやると、小さななりで 相変わらず威勢良く平らげ、その後は再び 定位置の木箱に寝そべって過ごして居た。 こんな天気の日曜だから、店ものんびり。 ふと気付けば、もう午後四時である。 あれれ?そう云えば、お前ったら、 …

日曜工作倶楽部

|猫随想| 今にも雨が降りそうだのに、降って来ない。 何だか騙されたよな天気の日曜日は、静か。 こんな天気じゃ、どのみち外壁の塗装は出来ぬし、 小屋仕事で出た杉板とコンパネの端材を使って、 剣菱のための休み箱なんぞ、拵えてやろうかしら。 小屋から適当な端材をひょいっと見繕い、 カットした杉板をビス留めして、四角い枠を組み、 同じくカットしたコンパネを、底面にビスで留める。 午後の合間に、ちゃちゃっと十五分。 30cm×40cmの四角い休み箱が出来上がり。 杉の木目がきれいで、…

あの娘の訪問

|猫随想| 連日のよに雨が降り、八月とは思えぬよな涼しい日が続く。賢い娘だから、こんな日には人の出入りの少ないことを知って居るのだろ。雨宿りを兼ねてか、剣菱は早い時刻にやって来て、軒下の目立たぬ所で昼寝などして過ごす。午後の雨上がりに、小屋の中で工具類を整理して居たら、いつの間についてきたのか。小屋の入り口から、中を覗いて居たものだから「おや、来たの?入ってみるかい?大丈夫だよ」そう声を掛けると、先ずは顔だけにゅっと差し入れて内部を見回し、念入りに彼女なりの安全確認を済ませた…

陽だまりの娘

|猫随想| 剣菱は相変わらず日参して居る。 至極稀に姿を見せぬ日も在り心配させもするが、 大抵夕刻近くには姿を見せ、裏口横で餌を食べると 再び軒下へ戻って来て、ちゃんと人目につかぬよに 柱と鉢植えの陰の、丁度死角となる塩梅のところへ、 小さく伸びて暫しゆるりと寛いだ後、おかわりを催促し、 腹も心も満たされると、とことこ何処かへ帰ってゆく。 相変わらず用心深く、相変わらず触れないものの、 手から餌を口にするのはすっかり馴れた風で*1、 しかしながら、野良として暮らす猫を必要以上…

療法食とお小水

|雑記| |猫随想| 拙雑記帖。猫ブログでも何でも無いのであるが、時折出て来る猫ついでに、”療法食”と呼ばれる治療用フードの処方について想うところを、たまには一寸だけ真面目に書いてみよかしら、と。 ただし、是はあくまでも私の個人的な意見です故、悪しからず...。 少し前の若旦那小水問題(◆ ◆参照)でしみじみと感じたのは、特に勉強熱心なお医者は別として、地方の平均的な動物のお医者と云うのは、概ねフードに関して、どうも通り一遍な傾向にあるよに感じざるを得ない。確かに、日々の診察…

事情

|雑記| |猫随想| いつぞやも書いたが、私は滅多に家を空けない。否「空けられぬ」と云った方が、正しい。理由はズバリ、拙宅の”猫二匹の給餌問題”である。給餌如きで何がお困りか?とお思いだろうが、まあ是が色々と複雑なのである。 御飯は一日二回。お小水問題のデリケエトな若旦那には下部尿路疾患、生まれつき腎臓に難在りの忍びには腎臓病、と其々の体の状態に配慮した異なる種類の品を与えねばならず、更に忍びについては、ここへ毎回の漢方薬が加わる。白湯で溶いたのをかけて”つゆだく御飯”にして…

そして、人生は、続く

|猫随想| 先月末のリリース以降も、剣菱は律儀に日参して居る。 手術の痕もすっかり癒えたと見え、木登りする身ごなしも俊敏、食欲も旺盛で元気な様子であるのだけれど、毎日こうして彼女を見る度、相変わらず割り切れぬ想いがちくりと痛んだ。私の行いは正しかったのか、正しくなかったのか。是で良かったのか、良くなかったのか。はっきりとした答えを得ぬまま、漠然としたまま、相変わらず苦さだけが残る日々が続いて居た。この何とも煮え切らない、胸苦しい、手詰まりな感じ。この苦さ。確かに知って居る気が…

達者でな

|猫随想| 今日、剣菱をリリースした。あたたかな日中だった。丸四日をケージの中に過ごした剣菱は、ちいとも暴れず、おとなしいものだった。幾ら養生のためとは云え、狭いところへ閉じ込められて、快適であった筈などなかろうけれど、ご飯をしっかり食べ、大も小もしっかり出し、そして兎に角よく眠った。それも今日でお終い。表へ向かってケージの扉を開け放ち、さあ、外へ戻りな。と云うと、剣菱は少し迷った風に前足を出しては引っ込め、暫くケージの中に留まって、ゆっくり時間をかけて表へ出た。そうして、見…

剣菱保護記

|猫随想| 一昨日、水曜の夕刻。ようやっと剣菱を無事保護することが出来た。本当に長い辛い日々だった。しかしまぁ、たった一匹の雌猫のことでこんなに苦労するとは、まったく思いもよらなんだ。否、私が自分で勝手に思い詰めてしまっただけのことなのであって、当の剣菱には何らの咎も無かろうよ。しかし、どうしてあの日、剣菱はあんなにあっけなく捕獲器にかかったのだろか。 ストッパーの僅かな調整ミスが原因で失敗したが、剣菱は既に二度も捕らわれかかって居り、以来、どんなに空腹であろうと、捕獲器の入…

運命の女

|雑記| |猫随想| 実はここ暫く、体調が芳しくなかったのである。食事がろくろく喉を通らず、夜もしみじみ眠れず、仕事に立てば動悸がしたり息苦しくなったり。まことにお恥ずかしい話だが、剣菱捕獲のプレッシャーから精神的にすっかり参ってしまい、にっちもさっちもゆかなくなってしまったのである。 それと云うのも、一旦仕切り直しとなった捕獲計画。剣菱に合わせて焦らず参ろう、などと考えて居たのに、正月が明けて少しした頃からか。時折大きくアオアオと鳴きながら、オスの野良猫が付近をうろつき出し…

剣菱の精一杯

|雑記| |猫随想| 昨日の剣菱捕獲が断念せざるを得ぬ結果となり、早く何とかせねば、と焦っていたのであろう。 夕刻近くに現れた剣菱を、今度こそと躍起になるも、そんな具合だから苛々があちらさんにも伝わるのか。当然上手くゆく筈も無い。まして若旦那をお医者へ連れてゆく予定も在ったため、余計に苛々として居たのだと想う。結局、計画も途中に諦めてお医者へ行くこととしたのだけれど、余裕の無い気持ちから、若旦那を無理に急かしてしまう。突然の尿路閉塞からひと月。尿検査の結果も異常無し、もう大丈…

孤軍奮闘

|雑記| |猫随想| ■用意周到に進めて居た”剣菱年内捕獲計画”を、本日いよいよ決行。数日前には赤ひげ先生の所へ連絡し、不妊手術の予約済み。捕獲の段取りも準備も万端にして挑んだのである...が。あえなく撃沈。段ボールハウスの中へ豪華な山盛りの餌を仕込んで出入り口を見張るも、何か異変を察知したのか、出たり入ったりでそわそわの剣菱。小一時間ねばったが結局、今回は諦めざるを得ず、赤ひげ先生に電話。「まぁねぇ、是ばかりは野良ちゃんだから仕方無いよ」と、一応明日ぎりぎりまで待って下さる…

剣菱通信

|猫随想| ■十一月某日 洗濯物を干して居たら、お隣の奥さんが箒で剣菱を塀の上から追っ払って居たので、挨拶がてら「この野良、どこから来るんでしょうねぇ」などと、それとなく探りを入れてみる。お隣ではここ二・三ヶ月程に姿を見掛けるよになり、しかし奥さんは、猫は元より生き物全般が好きでは無いので、庭先をうろつかれて困って居ると云う。そこで、何とか人馴れさせ、捕まえて不妊手術を施し、できれば里親を探してやろうかと考えて居ること。そちらに一切迷惑の掛からぬよに配慮するので、是非給餌をお…

剣菱の日参

|猫随想| 件のへんてこ模様の黒白野良(以下”剣菱”)であるが、 ここ二週間程の間、店の裏手に日参して来て居る。 初めのうちこそ、細道を隔てた隣家の塀の上で 香箱なんぞ組み、こちらの様子を覗って居たのが、 我々の”ゆっくりまばたき”*1にも、同じく ”ゆっくりまばたき”で応じてくれるよになって、 野良なりに慣れてきたと想われるものの、やはり そこは野良だけあって、相変わらず警戒心は強い。 差し出した手に対しての「シャー」は勿論のこと、 近寄ればささと身を隠すなど、距離は容易に…

嵐の夜

|猫随想| 轟々の嵐の只中に居て寝付かれず、 あの小さな、へんてこ模様の、 黒白猫のことを考えて居た。 あいつ。 何処に居るのか知らないけれど、 この凄まじい雨風で、無事に居るだろか。 身を潜めて、じっと耐えて居るのだろか。 夜具に潜り込んだ傍らの若旦那と接した 腕の内側へ、仄かな体温を感じながら、 只、まんじりともせず。 あの小さな猫のことを考えて居た。

八月のソファ

|忍び| |猫随想| 夏の残りのもたらす暑さを、拙宅の猫らは 各々、気の向く場所に長く伸びて凌いで居る。 忍びことビルボは、大抵が寝台の上を定位置とし、 若旦那ピピンのよに、堂々と茶の間のソファで 寝そべることは一度も無かったのだけれど、 水鉢の水を入れ替えようと、午後部屋へ戻ると、 何故だかソファの上で忍びが眠って居た。 薄い横腹を上に向け、四肢をうんと伸ばしたその様に、 思いがけず亡きアーロンが重なって、瞬間、 心臓がどきん、と云った。 アーロン 2011年9月15日撮影…

優しい旅人

|猫随想| 俳優の加藤剛氏が、猫についてのエッセイの中でこんな風に綴って居る。 生きものと共にあるということは小さな人生が傍らにあるということでしょう。彼等は持ち時間を黙って通り抜ける優しい旅人の作法を心得ていて、足早に人間の生活の中をつつましく歩き、人よりも急いで老い、去ってゆきます。 そう。 人間の鈍さに対して彼らはいつも寛容であり、 もの云わずともその目で、尻尾で、多くを語り、 物事だけならず、内側の機微をも感じ取り、 我々の数倍の速さで歳を重ねてゆく。 心優しく、思慮…

ふうちゃん

|猫随想| つい先日のことだ。父よりこんな話を聞いた。父が知人からの頼まれ事で、二丁目のOさん宅を訪ねたときのこと。Oさんは長くこの辺りの区長を務めた人で、齢七十半ばとなる現在でも、何かと世話役的な存在でご健在なのだが、父がOさんと顔を合わせるのは、随分と久しぶりのことであったらしい。玄関先で用事が済んだ帰り際 「そう云えば”ふうちゃん”はどうして居ますか?」 と聞かれた父は、”ふうちゃん”が癌を患って十年近く前にこの世を去ったことを告げると、Oさんはがっくりと肩を落とし「そ…

猫と暮らせば

|本| |猫随想| 猫のよびごえ作者: 町田康出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/11/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る 町田家の猫シリィズ最新刊は、今や最古参となった奈々とそれに続くエル、中堅どころのシャンパン兄弟らとの暮らしに、またまた新たな猫(犬までも)が加わり、怒涛の如き泣き笑いの日々が綴られる。何しろ奈々嬢を始めとする先住の四匹は、揃いも揃って皆曲者揃い。其処へビーチだのトナだのネムリだのシゲゾーだの、次々と新たな猫たちがやって…

命日

|猫随想| 爺様ことアーロンの命日。 あれから二年の月日が巡り、 小さな骨壷に見守られながら、 今、私は二匹の猫と暮らす。

ひとりぼっちのあいつ

|猫随想| 私が過去、共に暮らした猫たち。*1アーロンを筆頭にタロー、ふうについては、ここに幾度か触れたことが在るけれど、実はもう一匹。長い間、その記憶に触れることを躊躇って居た猫が在る。名をノーマンと云う。 体の大きな雉の雄猫ノーマンは、私が東京に暮らして居た時期に出遭った猫で、三歳に届かずこの世を去ってしまった。同居人であった従妹と下北沢を歩いて居たとき、路地の電信柱へ”猫を貰って下さい”との張り紙を偶然見掛けたのが、そもそものきっかけだった。連絡先の紙札を切り取って帰り…

どこにもいない

|本| |猫随想| フランシス子へ作者: 吉本隆明出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/03/09メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (6件) を見る あの合わせ鏡のような同体感をいったいどう言ったらいいんでしょう。 自分の「うつし」がそこにいるっていうあの感じというのは、ちょっとほかの動物ではたとえようがない気がします。 僕は「言葉」というものを考え尽くそうとしてきたけれど、猫っていうのは、こっちがまだ「言葉」にしていない感情まで正確に推測して…

かまけてばかり居る

|本| |猫随想| 猫にかまけて作者: 町田康出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/11/16メディア: 単行本 クリック: 33回この商品を含むブログ (192件) を見る暇さえ在れば、猫にかまけてばかり居る。拙宅の猫にかまけるのは勿論、路上に出くわす猫や、今は記憶の中に住む猫ら。果てはやれ、活字の中の猫にさえ現前とかまけて居る有様である。こと一冊まるっと猫について綴られたものなどは、それがたとい他所宅の猫であっても、読んで居るうちに何やら近しい存在のよな気がして、…

君は友だち

|若旦那| |猫随想| 黄金色と緑色。 別々の、違った瞳。 けれど、眼差しの奥深くで、君たちは繋がって居る。 尻尾を持った、私の友だち。 若旦那ことピピンが拙宅にやって来て、本日で丸一年。想えば青天の霹靂から紆余曲折を経て、爺さんの旅立ちより、未だひと月も経たぬうちのことであった。(◆)何だかついこないだのことのよに感ぜられるけれど、あんなに小さかったのが、健やかを絵に描いたよに育ち、もうすっかり一丁前である。 アーロンとピピン。彼岸の猫と此岸の猫。この二者の間には、目に見え…

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