双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

|日々| の検索結果:

静かな部屋

|日々| 先週辺りから、朝晩がぐっと冷え込み出して、 部屋の支度に少しずつ冬物が増えて、 夜具に毛布を一枚足して、 シーツをフランネルのと換えて、 毛糸のカーディガンを着た。 猫は先代を真似て押入れに入って、 やっぱり先代と同じ場所で丸く眠って、 夜の空気はつうと冷たくなって、 そうして部屋はひっそり、静かとなった。 ちょっと寂しくて、けれども安らかで。 『ムーミン谷の十一月』みたいだな。

四角い蛙と金木犀

|日々| 逸れた台風の尻尾の名残りか、 朝からむわんと汗ばむよな陽気。 けれども午後に入って、 西の方から大きな雨雲が近付くと、 空が段々に暗くなる。程無く、大粒の雨。 幾度かの降ったり止んだりが続いて、 宵の頃には、いつの間にか終わって居た。 表へ出て、蛙の居場所を確かめる。 相変わらず四角い図体で、植木鉢の縁。 雨上がりのひんやりとした夜風の中に、 微かな、一握の、金木犀の匂いがした。 何処かで犬が、くんと鳴く。

入道雲と鱗雲

|日々| 日中の秋夏ないまぜの奇妙さ、相も変わらず。 見上げた空には入道雲と鱗雲が隣り合い、 秋の大運動会に集う人々は、真夏の装いである。 昼餉など、いったい何を拵えたら良いものかと、 冷蔵庫の棚をじいと見詰めては、溜息も出る。 是には猫で無くとも、いい加減にうんざりとし、 彼らの作法に倣って不貞寝、としたいところが、 しかしながら、当方の所属は人間であり、 曲がりなりにも、一応の仕事らしきも持って居て、 それで金銭を稼がねば暮らしてゆかれないため、 幾らうんざりだ、辟易だと…

海と散髪

|日々| 何やかや、ふた月も放ってしまった散髪へ行く。 事前に予約の電話をかけたところ、 月曜日は生憎朝の八時しか空いて居ない との事であったのだが、 たまには早い内に動くのも宜しかろうと、 日々徐々に馴染みつつある古森号に乗っかって、 団地の中を抜け、街場へと下り、其処から浜へ向かう。 夏休みだから、道中に通学の子供らの姿も無く、 すいすいと走るまま、二十分程して美容室に到着する。 少々行儀は悪いけれど、あんまり喉が渇いたもので、 途中に買い求めた珈琲牛乳を飲みながら、 不…

季節外れ

|日々| 暦は六月も半ばを過ぎ、梅雨を迎え、 いつに無く肌寒い日が続いて居る。 夜などは肌寒いどころか、全く立派に寒いもので、 律儀に衣類から夜具から季節様のものと 入れ替えてしまった手前、今更寒いからと云って、 押入れから引っ張り出すのも口惜しく、 半ば痩せ我慢だけで凌いで居たのだが、 ここ数日は、それもいよいよ馬鹿らしくなってきて、 已む無く薄手の膝掛けを一枚だけ、引っ張り出した。 しかし、腰から下はそれで何とかなっても、 半分は如何ともし難い。 かと云って、一冬過ごして…

無意義の日

|日々| 火事と親爺こそ無かったが、地震と雷には事欠かぬ一日。 老婆心丸出しで、ぶつくさ云い、しぶしぶ諦めて過ごす。 デジタル写真機の設定を見直したり、調節したり。 財布の中身をひっくり返して掃除したり、繕ったり。 紙を切ったり、貼ったり。線を描いたり、消したり。 何れも必要であったと云えば、確かに必要であったに 違いは無いのだが、些かも有意義とは程遠く、鼻から溜息。 最後に熱いほうじ茶淹れて、今日を終いとした。

猫と休日

|日々| |若旦那| やけに長かった気のする一週間を終え、爽やかに目覚めた月曜の朝。窓を開ければ、吹く風の幾分涼やかな晴天なり。口端のヘルペスをうっかり忘れて、またしても歯ブラシの柄をあててしまい、ううと呻く。嗚呼、厄介だ。面倒だ。 洗濯物を干しに表へ出ると、山はいよいよ新緑の季節と云った感。休みではあったが、別段出掛ける予定も無いので、一通りの家事を済ませた後に、私事の整理や読書。若旦那の遊び相手などして過ごす。 猫タワー最上段のくぐり穴から、主を挑発。それでお前は満足か?…

家事と買出し

|日々| 気持ち良く寝床を出れば、何と云う家事日和だろ。 早速に窓を開け放って、からりと晴れた空気を通す。 雑巾絞って床拭き、窓拭き。シーツを放り込んだ 洗濯機を回す間に、トイレや風呂場など。水周りの 掃除を隅々まで済ますと、清々と風通し宜しく、実に さっぱりとする。いよいよこのトイレブラシも寿命か。 そう云えば、風呂の入浴剤も残り僅かだったかな。 買足しの必要となった品を、ささとメモに書き留め、 在り合わせで拵えたサンドウィッチと珈琲で昼食を 済ませた後、先日書いた矢先で些…

ものぐさの帳尻合わせ

|日々| 春の奴め。 今頃になって、ようやく重い腰を上げたと見え、 桜に木蓮に辛夷、其処へ終いの頃の梅まで、 全て一緒くたにして咲かせて、 無理矢理の帳尻を合わせる魂胆らしい。 まったく、ものぐさなことだよ。 など独り胸の内へぼやきながら、 小皿の上の胡瓜と蕪とを、交互にぽりとやり、 どうやら糠床の仕上りの首尾よく運んだのを 確かめて、しめしめ、と想う。

ひと月

|日々| 爺様が逝って丁度ひと月。初めての月命日を迎えた。 若旦那がやって来たのは、丁度二週間前の今日だった。 当たり前のよに、そっと静かに重なり合う、二つの魂。 寒風の中にも、からりと晴れた冬空は何処までも澄んで、 桶の水に手指を悴ませながら、午後。窓硝子を磨いた後、 黄緑色したポンポンの小菊を買い求めて、爺様に供えれば、 寂しいのと、あったかなのとが、入り混じったよな心持ち。

雨と薬缶

|日々| 喉に覚えた違和感が、軽い風邪を長引かせたか。 暫くの間、煩わしい空咳が続いて居たのだけれど、 一昨日の晩には咳も止み、どうやらようやく治まった。 ここ数ヶ月。身辺には悲喜交々、様々な事柄が去来し、 心模様落ち着かぬままに、もう師走の声を聞いて居る。 冷たい雨が束の間、霰に変わり、再び雨へと戻れば、 鼻先を刺す空気は、つんと鋭い。堪らず衿元を押さえて 屋内に駆け込むと、薬缶からなみなみと湯を注いで、 白い湯気に人心地。カップを囲った両の掌に血が通い、 程無く、じんわり…

とまどい

|日々| 郵便局まで小包を出しに行った帰り道。 遠く山肌を見やれば、ここ二日程の間に すっかり、赤黄と色づいて居たのだった。 近頃の秋と云ったら短くて、いつ来たのだか。 いつ去ったのだかも曖昧に、冬を迎えてしまう。 心づもりの整わぬ間に。僅かの戸惑いの内に。 今年もまた、こうして秋をしみじみせぬまま、 気付けば冬と入れ替わって居るのだろか。 頬で、額で、測る空気は、乾いて冷たい。 襟巻きをぎゅうとやって、くんと風をかぐ。

Hello. Farewell. Somewhere.

|日々| 二年ぶりに会いたかった人と会って、 いろんな話をして、後姿を宵の中へ見送った。 一日を仕舞い、夜。布団に入って目を閉じると、 沈んだ枕の、洗い髪がうっすら湿ったところから、 自分の体温がじんわり、皮膚を伝って流れてくる。 心地良い眠気。数時間前の、ゆるやかな記憶。 この世界の何処か。行きたい場所へ、行けますように。 今年も訪ねてくれて有難う。またお会いしましょう。

清々

|日々| 昨晩に小さく開けたまま眠った窓から、不意に肌寒い くらいの風がすうとひとつ、入り込む。枕元の時計を 大儀に見やると、未だ四時半だった。そのまま再び 眠りへと戻る。台風一過。温帯低気圧の去り後。 十時に起床してすぐに、窓と云う窓を全て開け放ち、 湿ってばかりだった部屋の中へ、ようやく清々と乾いた 風を通す。箒を掛け、床を拭く。久々の布団を干しに 表へ出れば、お天道様の下で手摺が熱い。けれども。 前髪と額の間を抜けてゆく、からりと澄んだ空気には、 確かにあの馴染み深い、…

苦瓜三昧と二、三の事柄

|日々| 先日、お隣から大量のゴーヤーを頂戴したものだから、 副菜には暫くの間、ゴーヤーばかりが続きそうである。 まとめて下処理したのを、ピクルスやらナムルに調理し、 ナムルついでに、チャプチェなんぞを拵えて昼食とする。 Aちゃん、海苔の上に御飯とチャプチェを乗せて巻く。 なかなか旨い、とのこと。食事の捗るのは良いこと也。 折角の写真機を手に入れたのに、未だ一度も出掛けられず、 専ら爺様相手に使うのみ、となって居る。是ではまるで巷の 親馬鹿と何ら変わり無いではないか。否、待て…

家事と老猫

|日々| この貴重な晴天を無駄にするまい、と家事に徹する一日。 それではあまりに味気無いので、爺様ポートレイトで茶を濁す。 おお、ヴォワイヤン。

合流点

|日々| 西日のようやく落ち着いた頃、鉢植えの水遣りに 表へ出ると、息苦しいくらいの熱気の中へ、北から ひんやりした風が伸びてきた。ジョウロを手にして 水場へ立てば、左側はむわんと。右側はひんやりと。 丁度、身体は二つの違った温度の合流点みたいに。 奇妙な悪戯でもして居る心地で面白がったものの、 その内、気味の悪い胸苦しさを覚えて、すごすご退却。 やがて外気は北風の優勢となり、大きな雷を連れた 雨の加わったお陰で、幾分なりと落ち着いたのだろか。 アスファルトへ落ちた雨音が、車…

匂い

|日々| 窓へ仕立てた蔓はこの夏、あっと云う間に伸び育ち、 小さな掌を広げたよな緑の葉を茂らせた。 開いた窓際まで昼食を運んで、コップの水を飲む。 匙を置いて、葉の隙間に程好く遮られた表を眺めやれば、 すうと気持ちの良い風が入って来る。と、 照りつける陽射しに、アスファルトのちりちりと 焼ける音が聞こえてきそうなところへ、不釣合いな遠雷。 真っ青な夏空から、先ずは、ぽつり。 程無く、ざあと大粒の雨が降ってきた。 あ。むうと立ち上ってくるこの匂いは、確かに、 熱に焼かれた路面と…

八月草想

|日々| くぐもった雷鳴を懐に隠した積乱雲の下で、だらり。 緩んだ熱風だけがようやく動いて居る、土曜の午後。 薄暮を待って使いへ出れば、幾らかはしのぎやすくて、 道路脇に小学校の敷地をぐるり囲む、背高の立派な 木々の中から、蝉と云う蝉が、自棄でもおこしたみたい にして鳴いて居た。けれども僅かの風がすっかり 凪いでしまえば、やっぱりむうとなって、のろのろと 歩いて居るのに、対峙した風景が、不意にひとつの ぬるい塊となったところへ、束の間時間は止められて、 只、間抜けにつっ立って…

通り雨の後

|日々| 突然に空が真っ暗になって、分厚く覆った雲から バケツをひっくり返したよな雨が降り出した午後。 半時程して止んだ後、表へ出て雨上がりの匂いを くんとやり、朝顔の鉢へ目を落とすと、少し育った本葉に 大きな雨粒が乗って居た。其処へすうと涼しい風が来て、 散髪したばかりの前髪を通り抜けるのが、心地よい。 電線に烏がカァと鳴けば、次いで山鳥もピチチと鳴く。 "No man is an island,entire of itself..." ― John Donne 今日飲んだ…

歯ブラシと梅雨空

|日々| 数日前の朝に、歯ブラシの頭で傷つけてしまった 歯茎と薄い皮膚との境が未だ治まらず、煩わしい。 それを忘れて、つい再び同じ箇所へブラシを当てて しまったり、熱い湯を口いっぱいに含んだりすると、 ずきんと沁みて、うっすら滲んだ血の味が鈍く広がる。 配達業者の男性が来て、さっきラジオ聞いたら関東地方も 今日の午前中に梅雨入りしたそうですよ。手際良く伝票を めくりながら早口でそう云い、何だかいきなりですねぇ。 と、窓の外を見やった。前触れは在ったのかも知れないが、 梅雨の話…

山模様

|日々| 南からの風は滅法荒々しく、やがては雨をも伴って さながらの嵐か。しかしそれも幾時間の後に去り、 間も無くすれば、朗々とした晴天が広がって居た。 眺めの先へ、嵐に洗われた山の稜線はくっきりと。 山肌にはふんわりと、水を含む筆先から滲んだ、 淡い水彩画のよな春の彩りが添えられ、何処か 絵に描いた、小さな浮島たちを想わせるものである。 遅い昼食の窓辺から、その景色を眺めるうちに、 次第胸の奥底がむず痒くなって、ただ無性に山へ 出掛けたいと想う。しかしながら、未だ余震の続く…

ひと月

|日々| 先月の震災から、丁度ひと月を数えた今日。 早いものだ。つい昨日の事みたいだのに。 あれやこれや、想いを馳せながら歩けば、 ふと見上げた空の下。小学校の校庭には、 小さく開き始めたばかりの、桜の木々が在った。 淡い桃色に混じって咲く、木蓮の白が眩しい。 夕刻に録画してあった試合を観戦して居ると、 叩きつけるよな大粒の雨に、大きな雷鳴が。 慌てて洗面所の小窓を閉めて観戦へ戻った途端、 低い地響きとともに、突如大きな揺れに襲われる。 今までの余震の中では、いちばん大きかっ…

うつろい

|日々| |音| 店に珈琲の香りと営みの音が帰って来て、 久しぶりに、午後の日差しへ頬杖をついた。 そこから望む山肌は、ぼうっと淡くやわらかな うす桃色にけぶって居て、この空白の間にも、 季節だけは変わらず進んで居たのだなぁ、と 暫し目を細めて眺め見た。春が見えた。 Bach in Brazilメディア: CD クリック: 3回この商品を含むブログ (1件) を見る

おかえり。ただいま。

|日々| 二週間のぽっかりの空白を挟んで、今日。 ようやく店を開けた。以前と変わらないよで、 けれど何かの欠けている、同じ場所。 今、店を開けたところで、売り上げなんか 望めはしないのだけれど、それでも良い。 入るか入らないかは、重要じゃない。 こうして徐々に、段々に。一つずつ。 街に灯の戻ることが大切なのだ、と思う。 そうやって、灯が戻って、皆の生活も戻ってゆく。 ”戻る” ことは、必ずしも ”元通り” と云うのじゃなくて。 空白の、何処か遠くへ離れてしまって居た 心の在り…

過ぎゆく

|日々| 豆腐と葱の味噌汁に、納豆、大根の甘酢漬け。 疎かに無いものの、十分に気の抜けた昼食。 何をするにしても考えが覚束なくて、困る。 其れも是も皆、この一日の過ぎゆく早さだ。 ついこの間、正月を迎えたばかりだのに、 もう一月も末などと、おかしなことを云う。

女四人正月

|日々| 大晦日元旦と、実家に親戚宅に、ほぼ おさんどんして過ごし、休みの最後である 本日となって、ようやく人心地ついて居る。 とは云っても、掃除に山程の洗濯など。 我が雑事に半日を割き、夕刻近くになって、 やれやれと茶をすすって居るところへ すわ、電話が鳴る。H叔母であった。 「あんた、暇ならちょっと出掛けない?」 普段は外出の機会の殆ど無い、足の不自由な 祖母と、施設に独り住いの大叔母ヨネちゃんの 二人を連れて、僅かながらも正月の外の空気を、 と考えてのことらしい。身支度…

冬の朝

|日々| 朝、目が覚めると、こぼれる息が白い。 布団から僅かに覗いた鼻先を、つうと 鋭く刺すよな冷気に、うずうずと寝床を 出るのが躊躇われる。既に粗方の熱を失って、 うす温いだけとなった湯たんぽを足元へ、 寝床を這い出す機を探りながら、只そうして 所在無く身じろぐ。椅子の上の衣服が冷たい。 蛇口を捻った最初の水も、氷のよに冷たい。 空は重たい鉛色で、きんと冴え澄み、 そして、この冬初めて。小雪をまじえた。

Color of season

|日々| 「おお、寒い寒い」 会う人会う人が皆 口の端に上せるも、ようやく季節が季節 らしい佇まいを取り戻したまでのこと。 無粋に騒ぎ立てるべきものではあるまい。 「こう寒いと嫌ですねぇ」 と、尤もらしく 返しながら、その実、心中ではニヤリとする。 冷蔵庫をひと通り覗くと、豆腐が半丁に、 使いかけの油揚げ。糸蒟蒻などを見付け、 それを醤油と味醂とで薄味に炊き、昼にする。 箸を置き、ほうじ茶をすすりながら、ふと 窓の外を見やれば、冬色した寒空が在った。

只の月曜

|日々| |音| 夜具を取り換え、洗濯機をまわし、箒をかける。 大きく開け放った窓へ、僅かに身を乗り出せば、 頬に触れる外気は、とても師走と思えず。 昨年の今頃は、確か厚手のダッフルコートなど 着て居た筈だのに。洗面台に雑巾を濯ぎながら、 それでも水は冷たいのだな、と独り言ちる。 午後も四時をまわると、すとんと暗くなって、 始まったばかりの十二月が、もうすぐにでも 終わってしまいそな、そんな心持ちになる。 ジルチ(紙)アーティスト: シャック出版社/メーカー: インディーズ・…

<