双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

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秋と冬の間をさまよう草臥れた革靴

|旅| |回想| ここ数日で、随分と秋らしい肌触りに なってきたのと同時に、鉛色の寒空の季節が 次第に、近づいて来て居ることを知る。 首もとに巻くマフラーは、深緑と白の 縞模様のが良いな。ツイードのキャスケット。 タートルネックのセーターの上に、 茶色いコートを羽織ったら、ポケットに 小銭をそのまま入れて、手ぶらで出掛けよう。 ソフトクリームを買い、公園を散歩しようか。 公園の中程まで歩くと、大きな木の向こう、 大学に在る塔が、上半分だけ見える。 学生風情の青年が、やあと挨拶…

吟遊詩人はポケットの中にマッチを隠す

|旅| |回想| |音| テキサス州オースティンから、ルイジアナ州 ニューオリンズへと向かう、夜行バスに乗ると いつも、ヒューストンで乗り換えになった。 長旅の時間の殆どは、大抵が 移動中の睡眠に取って代わるけれど、 それでも、車窓の景色が後方へと、流れ 過ぎ去ってゆくのを、何かを想いながら、 或いはただぼんやりと、眺めてみたりする。 あれは、いつだったろう。 ヒューストン〜ニューオリンズ間の何処かで、 夕暮れどきの車中、ふと目を覚ますと 右も左も、景色の全てが、水面になって…

Fantastic something

|旅| |回想| 1997年の夏、だっただろか…。アメリカを旅して居た私は、或る土曜日、テネシー州はナッシュビルにて長距離バスを降りた。しかし、まことタイミングの悪いことに、何やらその週は、カントリー・ミュージックのコンベンションらしきを開催中とかで、アメリカ中から人々が集まり、街中の宿と云う宿は、何処も彼処も満室。くたくたになってようやく見つけた先は、中心部より随分と離れた、ホリデーイン。長旅の疲労も手伝って、着いたそばからどさり、部屋のベッドに倒れ込んだ。 やがて目が覚め…

雨の音

|旅| |回想| 予報通り、今日は雨となった。 明日も天気が悪いらしいけれど。 こうしていると、雨音のおかげで外が かえって、静かになってゆくのが良く分かる。 それに混じって、蟋蟀が鳴くのも聞こえる。 猫はさっきからずっと、私から微妙な距離をとり、 寝たふりを決め込んでいるらしい。 またいつかの長距離バスでの旅を、思い出している。 深夜遅くに、乗り換えで降りただけの 誰も知らない、あまりにも小さな町での 煤けたよな、雨上がりの匂い。 カリフォルニアやニューヨークだけが アメリ…

旅の記憶

|旅| |回想| 他人の旅話を聞いたり読んだりすると つい、自分も旅に出たくなる。 それが無理ならば、 いつかの旅の記憶の品々を、 押入れの箱から、こっそり探し出してみる。 長距離バスのチケット。 折り目の擦り切れた地図。 誰かの書き込みのある、 破れて草臥れた時刻表。 そう云った品々を手にすると、 遠くにあった筈の旅の記憶は、ぼんやりと そしてやがて、確かとなって戻ってくる。 けれど、ときたま思うのは、 こうした旅の記憶の半分が、恐らく それを思い出したときに 作られている…

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