双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

|猫随想| の検索結果:

かまけてばかり居る

|本| |猫随想| 猫にかまけて作者: 町田康出版社/メーカー: 講談社発売日: 2004/11/16メディア: 単行本 クリック: 33回この商品を含むブログ (192件) を見る暇さえ在れば、猫にかまけてばかり居る。拙宅の猫にかまけるのは勿論、路上に出くわす猫や、今は記憶の中に住む猫ら。果てはやれ、活字の中の猫にさえ現前とかまけて居る有様である。こと一冊まるっと猫について綴られたものなどは、それがたとい他所宅の猫であっても、読んで居るうちに何やら近しい存在のよな気がして、…

君は友だち

|若旦那| |猫随想| 黄金色と緑色。 別々の、違った瞳。 けれど、眼差しの奥深くで、君たちは繋がって居る。 尻尾を持った、私の友だち。 若旦那ことピピンが拙宅にやって来て、本日で丸一年。想えば青天の霹靂から紆余曲折を経て、爺さんの旅立ちより、未だひと月も経たぬうちのことであった。(◆)何だかついこないだのことのよに感ぜられるけれど、あんなに小さかったのが、健やかを絵に描いたよに育ち、もうすっかり一丁前である。 アーロンとピピン。彼岸の猫と此岸の猫。この二者の間には、目に見え…

八月

|猫随想| |回想| 私が八月に”死”を想うのは、 其処にお盆の在る所為だろう。 何処からか漂う、線香の匂い。 炎天下にむせるよな、供花の匂い。 宵に灯る、盆灯篭の仄かさ。 年に一度だけ、亡き者たちの戻る季節。 昨年、爺猫が死に向かい始めたのも、 丁度、こんな八月の頃だった。 九月に旅立ったHさんも、そうだったろう。 だから尚更、八月は死を想わせる季節となった。 そうしてこれからも、毎年八月が来る度に、 私は死を想い、亡き者を想い、 迎え、送るのだ。

新盆

|猫随想| 爺さんことアーロンの新盆を迎える。 もう、そんなに経ってしまったのだな。 お盆が終われば、あっと云う間に秋が来て、 そうして、十一月が巡ってくるのだな。 盛夏に色鮮やかな、たっぷりとした菊の花。 どうしてだろ。 何故だかお前には、丸い小菊が似合う気がするんだ。

私家版 届く

|本| |猫随想| 小糠雨そぼ降る肌寒い午後、先月末『blurb』へ注文した爺さんのアルバム(→ ■)が予定より十日も早く届いた。 平たい段ボール箱に入ったアルバムは、自分で拵えたものの筈だのに、何だかよそ行きみたいな体裁に仕上がって送られて来て、少々こそばゆい。包みを解いて、そろりそろり。一頁ずつめくれば、しみじみ感慨深いのと同時に、生前の爺さんを否応無く想い出させるものだから、ついこみ上げてきて、ほろりとなった。 +++ 表紙。 『人生足別離。』なんて、一寸格好つけ過ぎち…

ちくり

|音| |猫随想| 風呂の沸くのを待つ間、洗濯物を畳む。 鍵盤からこぼれた音。水面を波紋のよに広がってゆく。 やわらかな、揺らぎ。雨。少しの翳りと、静かと。Feltアーティスト: Nils Frahm出版社/メーカー: Erased Tapes Records発売日: 2011/10/11メディア: CD購入: 2人 クリック: 18回この商品を含むブログ (3件) を見る 少し離れたところで猫が寝返りを打つ。 寝息と一緒に、ちり、と小さく鈴が鳴った。 視界の右の端。白黒写真…

猫と人

|猫随想| |本| 再び女たちよ! (新潮文庫)作者: 伊丹十三出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/06/26メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (25件) を見る先日のエントリ(→■)の冒頭で触れたのが、この伊丹氏の名エッセイ『再び女たちよ!』である。折角の機会なので、同書に収録され、同じく猫について書かれた「我が思い出の猫猫」の中から、ひとつ素敵な箇所をご紹介したい。 氏は「どうして猫が好きなの?」「ねえ、あたしとコガネとどっちが…

猫の命名

|猫随想| |若旦那| The Naming of Cats is a difficult matter It isn't just one of your holiday games 猫に名前を付けるのは 難しい事柄です それはとても 休みの日の片手間仕事というようなものじゃない T.S.エリオット 私はこの詩の一節を伊丹十三氏の著書の中で知ったが、成る程。確かにそうであるのだろう。 猫の名付けは、実に悩ましくも実に愉しい事柄だ。昨年末、若旦那を引き取ることを決めたとき、迎…

爺さんと

|猫随想| 拙宅の猫氏、名をアーロンと云う。 性別は雄。齢、七十も半ば。 共に暮らした猫は、過去に三匹居たから、 爺様で四番目となるのだろうが、 私個人の、と云うことでなら最初の猫である。 色柄、黒を基調として腹と胸、足首、鼻筋と 其処から下が白。丁度、年中タキシードを着て 居るよなものであるから、身なりは宜しいか。 仔猫の時分からちいと風変わりなところが在り、 他の兄弟らと比べても、凡そ猫らしからぬ猫であった。 おっとりして居るのに、何処か素っ頓狂。 漂白剤の臭いが滅法好き…

我々

|猫随想| 昼間の冷房から開放されて、ふうと人心地つき、 ぬるい風呂に浸かっては、ふうと人心地つく。 年齢云々もあろうけれど、何せ冷房と云うのが苦手で、 一日中冷房の下に居れば、肘だの膝だの節々が堪える。 昨晩は腰の辺りが鈍く痛んで煩わしく、其処へ蒸して 寝苦しいものだから、暫くは布団を掛けたりめくったり。 体の置き所無く、寝付くに難儀してもぞもぞとして居た。 人がそうなら猫もまた然り、と云ったところで、まして 老描のアーロン氏のこと。実にぐたっと、見るも気の毒な様。 困った…

猫に餡子

|猫随想| 草餅を頂いたのをむしゃむしゃやって居ると、 それを見た起き抜けの猫氏が、じいと傍らに張り付き 離れない。何の気無しに、つぶ餡を指先に少々。 乗っけて鼻先へつっと突き出せば、実に 猫氏、物凄い勢いでかじり付いた。今の今まで、 猫に餡子を食べさせたことなど無かったが、 あまりにも夢中で食べるもので、ほほうと感心半分、 つい呆気にとられて、じっと見入ってしまった。 おっと、是はいけない。先生、食いすぎですぞ。 と、三回あげたところで止めにする。 三白眼で凄まれた。

猫たち

|猫随想| 暦が立冬を迎え、去りし想いに穏やかな区切りを 受け入れ始めた先日。想いもよらぬ話を耳にした。 件の、火事と猫の話の顛末である。 老夫婦のお爺さんの方は、実のところ認知症が かなり進んで居るとかで、そのせいかどうかは 分からぬのだが、母屋の横の掘っ立て小屋のよな 離れで、お婆さんと総勢二十匹もの猫たちが、 寝起きを共にして居たらしい。猫屋敷、か…。 当初近所の人の話では、恐らく七匹くらいかなぁ、 などと聞いて居たので、それだけでも充分に驚きで あったのだけれど、その…

左様なら

|猫随想| おまるが消えた。 あれ程ここが気に入って、すっかり居付いていたのに、 日曜の晩に忽然と姿を消したきり、一度も戻らぬまま。 火事で家を失った件の老夫婦には子供が居らず、 それ故、猫を子供のよにかわいがって居たと云うのを、 後の話で聞き、どうやら身寄りも無いらしいから、 自分たちのこれからも知れぬ身では、どのみち 猫どころでは無かろう、とのことであったため、 おまるの今後を考えてやることにしたのだが、 仔猫であれば引き取り手は数多でも、それが 年老いた猫ともなると、話…

宿無し

|猫随想| 今朝、店を開けて少し経った頃。めいめいの 珈琲など飲みながら、丁度おまるのことなど、 ぼんやり考えて居たときであった。 「びゃあ。」 表から声が聞こえた。 「おまるが戻ってきた!!」 Aちゃんも私も、ふるふるとなって外へ飛び出た。 確かにおまるだった。何事もなかったかのよな顔して。 しょぼしょぼの小さな体に、どんぐりみたいな眼して。 私はかつて、自分の飼い猫以外の他所の猫へ、 こんな風な心持ちを抱くことなど無かった気がする。 自分でも意外で、些か動揺して居るくらい…

おまるのこと

|猫随想| そもそもは、ひょんな経緯からであった。数日前の晩のこと。母が日課のウォーキングの帰り道に、一匹の猫を連れて戻ってきた。連れてきた、と云うのは正確ではなくて、ついてきてしまった、と云うのが正しいのであるが、暗闇で目の合った瞬間、物凄い勢いで、鳴きながら母の方へと走ってきたらしい。追い返せど追い返せど、猫の奴、ちいとも怯まず。このまま放っておけば、その内に諦めて帰るだろ、と考えたのだけれど、猫は見目に似つかわしからぬだみ声で「びゃあびゃあ」鳴きながら、店の入り口前に張…

野良、再び

|猫随想| 昼をいくらかまわった頃、また裏手の方から仔猫の声。 ちょっくらその後の様子でも・・・と、見に行くと、 軒下でがさごそやって居たのは、先日の仔猫では無く、 また別の仔猫であった。良く似て居るので兄弟なの だろうけれど、毛の色柄が少しだけ違う。 おや?近寄って見てみれば、この子もまた例の如く、 お目々がひっついてしまって居るではないか。 あれまぁ。お前たち兄弟は、一体…。 一匹目程酷くは無かったものだから、然程の手間は 掛からなかったものの、今度の子はむずがるので、 …

野良

|猫随想| 午後。店の裏手にあたる、無人の貸家の玄関前に、 親子と思しき、猫二匹の姿を見掛けた。 丁度ひと月前だったろか。仔猫の鳴き声が夜通し 聞こえてきたことが在って、それがあまりに 心細くて切ないものだから、何とも云えず 胸の締め付けられるよな心持ちになり、以来 ずっと心に気に掛かっては居たのだけれど。 ううむ、もしかするとあの仔猫だろか。 秋桜の背高な植え込みの中。近付く人の気配に、 母猫はささと物陰へ隠れてしまったものの、 残った仔猫を鳴き真似で誘うと、ミャミャと甲高…

オランダ坂に重たい穴があきます

|猫随想| 長時間の冷房にさらされ続けて、鈍いだるさに纏わり つかれた体を、湯船に湯を張ったところへ落ち着ける。 ついシャワーの手軽さを選びそうになるが、やはり 一日の終いには、きちり風呂に浸かるよにしないと、 疲れが抜けぬばかりか、どうも調子が宜しくない。 風呂上り、北向きの窓を開けると、雨上がりの夜風が すうと入って、額の汗の引いてゆくのが心地良い。 我が猫氏は、人間の年齢にして還暦を半分以上過ぎて居り、 ここ数年で、すっかり爺さん然としてきたよに想う。 暑い夏場は 「た…

感傷日和

|猫随想| 洗濯物の風にたなびく風景。こんな涼やかな日に ふと感じるのは、そう遠くない秋の匂いだろか。 それとも、未だ気の早い話だろか。 白いシーツはさらりと、空の下にまぶしい。 夏がやってきて、何かが変わった訳でも無いのに、 一つの季節の終わる前、新たな季節の到来と共に、 何かの変わるよな気配を、つい心待ちにする。 ここ暫く訪れ無かった、件の白ブチ猫が、実は ご近所の外猫であったことを、つい先日知った。 しかも、てっきり子猫だとばかり思って居たのに、 しっかり五匹の子持ちで…

眠ると言ってはドアをあけ

|日々| |猫随想| 夜になると、ときどきやって来る、 白くてちいさな訪問者。 今夜もやって来た。 この前は、玄関のちょっと手前。 その前は、も少し離れた花壇の辺り。 来る度に段々近付いて、今夜は丁度 ドアを開けたところに、大きな目玉して。 外に出て近付いたら、ちょっと離れて、 Aちゃんが放ったエサ食べた。 白い毛の中に、ちょっとのブチ。 君は何処の子だい? 何処から来るんだい? いつだったかな。 雨の日にポーチで 雨宿りして居たのは。 窓から覗いたら、枕木にちっちゃな足跡が…

猫が行方不明

|猫随想| 仕事を終え、ほっと人心地つきつつ、 テレビなど見て居ったところ、先程まで 確かに在った筈の、猫氏の気配が消えて居る。 むむ。いつから居ないのだ? 猫氏は家猫であるため、部屋から外へ 出ることは殆ど無く、時折出たとしても、 窓から階下の屋根の上に降りて 右往左往したり、日向ぼっこする程度。 もしや、と思ってトイレへ向うと 案の定、窓が猫幅分、しっかり開いて居た。 ここからだと、外へ出られる寸法だ。 懐中電燈片手に、慌てて外を探す。 耳を欹てて鈴の音に注意するが、 辺…

<