双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

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さらば九十八型

|モノ| 以前にも書いた記憶が在るので、ご存知の方も幾らか居られるかも知れないが、拙宅の骨董品の如き電脳箱に入って居るのは、是が実に窓式の九十八型。おい!一体いつの話だヨ!と呆れられて、ご尤もである。思えばかれこれ十一年。我ながらまぁ、よくぞここまで辛抱したものと思う。否。ここまで来ると、もう八割方が意地であるか。何しろ、その不便さと云ったら、無い。不便なんてものは疾うに通り越し、通り越した末、殆ど意地だけで使いこなしてきたよなものである。しかしながら、ここへ来て、細々ながら…

肩掛け鞄

|モノ| 皮の鞄は二つきりだが、その内の肩掛けとは、 かれこれ二十年以上と付き合い長く、愛着も想い入れも深い。 ひと頃の勤め人諸氏の通勤風景には一般的に見られた、 或いは、ループタイにベレー帽と云った塩梅の 身繕いの爺様が、一寸した外出の際に下げて居た、 縦長の、あの革の肩掛け鞄である。 是は高校進学の祝いとして、父方のT叔父より出資して貰い、 其処へ僅かの貯金を足して、自ら買い求めた品なのだけれど、 明るい茶の、かちりとした牛革製で*1、後日、金主元である T叔父へ報告を兼…

似合う気骨

|雑記| |モノ| つい先日のことである。グレイ地に黄色い縞の 入ったボーダーTシャツを手にして、どうも 是は似合わぬ色合いじゃないかしら、と怪訝の 顔つきで居たところ、思わぬ意見を頂戴した。 「自分でそう思うだけだよ。とても似合う。」 ふむ。黄色などと云うのは、てっきり自分の 色では無いと信じて今までを過ごして来たが、 ともすると我々は、日々接する様々の事柄に対し、 斯様な思い込みとやらでもって、多かれ少なかれ。 自らの人生の幾らかを、損して居るのかも知れぬ。 それから程無…

使い道

|モノ| 先週、ソロテントを取りに実家へ寄った際、 押入れの天袋に、父が若い頃使って居た 山道具諸々を仕舞って在ったのを想い出し、 もののついでに確かめてみた。母の話によれば 数年前、私のガールスカウト時代の荷物*1と共に、 粗方は始末してしまった、とのことであったが、 それらしき段ボールを見付けたので、よいしょと 引っ張り出す。使い込まれたアルミのコッヘル。 入れ子式で、鍋兼器が大小一つずつと 小さな薬缶も入って居り、父はもっぱら鍋で ラーメンを煮て居たのらしい。煤は洗うと…

時計

|モノ| 抽斗の小箱の中へ、懐中時計をひとつ見付けた。 見付けたと云っても、すっかり忘れて放って居た訳ではない。一昨年まで現役であったのが壊れてしまい、市内の時計屋へ持って行ったところ、こう云う古いのは部品も無いし、万一直せるにしても、修理代が高くつくから新しいのを買った方が良い。とか何とか云われたもので、やむを得ずすごすごと持ち帰り、以来どうしたものかと仕舞ってあったのだ。 そう、元々が古い時計だ。知人宅より、亡くなったお爺さんが使って居たのを貰い受けた。手巻き式で、恐らく…

始末良き暮らし考:追記

|暮らし| |モノ| ところで、私の住いと云うのは仕事場と接して居る。元々がかなり古かった為、店舗部分には大きく手を加えたが、住いとして居る部分は、壁面にコンパネを打ちつけた程度で、ほぼそのまま。それに風呂とトイレは在っても*1、煮炊きの在り処である台所を設えて居ない様が、何処か ”生活” の佇まいに欠ける所為か。今もって、どうも ”仮暮らし” と云う構えが抜け切らない。また、一部の家財を除けば、その辺に在ったのや、貰ったので当面を済ませて居るところも多く、それも生活の佇まい…

始末良き暮らし考

|暮らし| |モノ| 物を持ち過ぎず、身ぎれいに、始末良く小さく暮らす。 三十路を迎えて以来、特に念頭に置き、己の暮らし向きの指標とするところであるのだが、皆様もご存じであるよに、滅法モノ集めの好きな質であるから、是が実に厄介で、容易に事が運ばぬ所以である。古物からガラクタ、紙モノの類に至るまで、それはもう、こまごまと抽斗やら箱やらにびっしりなのであり、それ故に冒頭の一行は、もはやライフワークと呼ぶべき一大構想となりつつあるのだ。 そもそも、人はいつ何時、如何なる形で死を迎え…

仕事着考

|モノ| |手仕事| 昔から仕事着 (作業着) の類。所謂 「ワークウェア」 と云うのが好きで、実際の仕事は勿論、普段着るものにも色濃いよな気がする。子供の頃から、叔父らが工場で着る 「ツナギ」 も好きだった。着古して色褪せて。工業油の染みだの、ほつれだのが沢山できた、無骨で堅牢な佇まい。母方の祖父がノコの目立てをするときに付けて居た、分厚いデニム地の作業エプロンも。父方の祖父の藍染の半纏も。其々の仕事に其々の仕事着が在って、其々の確固とした佇まいが在る。仕事に人となりが宿り…

ダッフルコートと魔法瓶

|モノ| 先日、実家へ立ち寄った折、母よりコートを一着渡された。いつだか母に貸した後、クリーニングへ出してから、そのまま母の箪笥へ紛れ込んで、ずっと仕舞われて居たのらしい。どうりでこちらの箪笥を幾ら探したところで、ちいとも見当たらなかった訳である。 茶色いロング丈の。ウールのダッフルコート。確か、未だ大学へ通って居た頃に買い求めた品であるから、ざっと見積もって十五年は経って居るだろか。想えば当時の私なりに考えて、いつまでも長く着られる良いものを。納得のゆくものを、じっくり探し…

ものぐさの帽子考

|モノ| それにしても私は良く帽子を被る。 単に好きだからと云うのも勿論あるが、ものぐさは自認するところであるので、朝もしくは出掛けの支度に、整髪をせずに済む利点は魅力であり、また着る物の色味が極めて地味であることから、そこへ帽子で差し色を加えることで体を成す、と云う、尤もらしい理由付けをすることもできる。 髪の長さはときによりけりだが、大抵の場合は非常に短いか。或いはおかっぱ、アルゼンチン*1、この三つの内の何れかであり、それによって合わせる帽子は、多少なりと異なってくる。…

季節

|本| |モノ| ムーミン谷の十一月 (講談社青い鳥文庫 (21‐8))作者: トーベ=ヤンソン,Tove Jansson,鈴木徹郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 1984/10/10メディア: 新書購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (7件) を見る 十月も半ばの頃となると、いつも決まって読みたくなるのが このお話なんだな。嗚呼。ともすると、冬以外の季節はずっと、 冬の来るのを待って過ごして居るよな気がする。何故なら 冬にまつわるあれこれの想いを、心に仕…

ブカブカシマシマ

|モノ| 季節の抽斗の入換えで、毎回気付くことなのだが、 紺、グレー、茶と、無地の地味さは云わずもがな。 柄物は、シャツの格子や縦縞を幾つかを除くと、 実にシマシマ。ボーダー柄ばかりなのだなぁ。 秋に入れば、ボーダーのTシャツにコーデュロイ のズボンと云うのも、随分と長いこと相変わらず。 新たに買い足すことが在っても、いつもの調子で 選んでしまうから、結局抽斗の中は変わらない。 しかも、こと寸法に関しては、ぴたっとしたのが どうにも苦手で、シャツからスボンから。大抵の ものは…

働く靴

|モノ| 二年程前。長年履いて居た靴がとうとう駄目になった。 女学生の頃に買い求めたもので、爪先にスチールの入った、 チェリーレッドのドクター・マーチン(三つ穴)だった。 長い年月の間にあちこち草臥れて、傷だらけの爪先は ビーフジャーキーをちぎったよになって。履き口がすっかり 壊れてしまい、けれども、もう履けないのだと知りながら、 どうにも捨てるに忍び無く、暫くはそのままにして置いた。 しかし、それでは死んだあいつも浮かばれまいと、いよいよ 今年春の来る前にさよならをした。あ…

鉛筆削り考

|モノ| 小学生の頃、文房具屋の棚には必ず在ったものだ。 あの、剃刀のよな刃で出来た、折畳み式の。 カッターと云うのでも無し。小刀と云うのでも無し。 大層薄っぺらく、せいぜい四〜五センチ程の大きさで、 筆入れにがさばらず、鉛筆を削るのには欠かせなかった。 随分昔に偶然見付けて、幾つか買い求めてあったのだが、 つい先頃、最後の一つが刃こぼれして、とうとう駄目に なってしまった。比較的昔の文房具の揃う、近くの書店へ 出向くと、もう置かなくなってしまったねぇ。とのこと。 名を知らぬ…

春眠に抗う

|雑記| |モノ| ここ数日の間で、気候も幾らか落ち着いてきた と見える。ようやく長袖一枚で過ごせるのは 良いが、どうも眠くていけない。先日出先で、 白いシャツを買い求めた。何の変哲も無い、 至極ありふれた襟付きのシャツであっても、 そう云う何でも無いものに限って、いざ探すと なると、なかなか想うものに行き会えぬことが 多いから、とても気分が良い。袖を通す前に 一度洗濯すると、尚のこと気分が良い。 あれこれ付け足さず、是一枚。その内白髪になった頃、 ただ羽織って様になるような…

筆記具考

|モノ| 靴下同様*1、筆記具に関しても、書ければ何でも良い! と云う風にはゆかない。我ながら何とも偏屈と想うが、 「イヤダカラ、イヤダ。」では無いけれど、筆記具は 書き味と塩梅。硬めの細字でないと、駄目ナノダ。 かと云って、あんまりカリカリ過ぎてもいけない。 カリカリとサラサラの微妙な間、それが案外難しい。 鉛筆ならば、昔からトンボ事務用鉛筆の F 。 HBでもHでも無く、何故だかFが好く馴染む。*2 ボールペンは、高校生の頃に出遭って以来、 スマートな鉛筆のよな収まり具合…

紳士ごのみ

|モノ| 以前に引き受けた野暮用を、新年には決して 持ち越したく無いので、昼近くに寝床を出てから 軽い昼食を済ませ、のろのろと取り掛かる。 もっと早くにやっつけてしまえば良かったのだが、 何せ気乗りがせねば、物事に取り掛かれぬ質故、 こんな年の瀬まで、ひっぱってきてしまった。 三時間程で集中力が切れ、残す一つはまた明日。 とは云え、八割方が片付いてほっとする。 表がすっかり暗くなった頃。煙草を切らして居たのに気付く。 コートを羽織り、ハンチング帽を引っつかんで、外へ。 つうと…

ぽちっと考

|雑記| |モノ| このところずっと心に引っ掛かって居た、或る想い。 先日のmikkさんのエントリ(街から消える店 - 音甘映画館)が、その想いと重なって居たのは、何かから何かが繋がって居るよで、こそっと嬉しい偶然だった。 「モノを買う」と云うこと。インターネット全盛の今の世に在って、それは「ネットでぽちっと」で事足りるよになってしまった。確かに、地方僻地在住と云う事情から、近辺では見付からぬCDや書籍など、私自身ネットでモノを買うことは度々在るし、ネットで買い物することの全…

靴下考

|モノ| 近頃は、靴下を履かぬ人が多い。 この寒い時期、素足にパンプスなど、 とてもではないが真似できない、と想う。 私は一年を通して、靴下を履かないと云うことが 先ず無い上、靴下にはちいとうるさい質なので、 靴下であれば何でも良い、と云う風にはゆかない。 丈は必ず長めで、ふくらはぎの中程までのを ざっくりさせて履くから、在る程度の緩みが 無ければいけない。履き口も緩めのもの。 リブの場合には、編地は太めのが良い。 勿論、季節ごとに素材や風合いは異なるが、 何れの季節も、化繊…

羊の季節

|モノ| 寝台の夜具に、毛布は未だ加わって居ないけれど、 掛け布団の上に、大判の膝掛けを一枚だけ。 毛織のあれこれ。湯たんぽ。毛糸。 編み物。登山用の靴下。 毛玉のついたカーディガン。 ネルの寝巻き。就寝前のカミツレのお茶。 膝の上の猫。朝の冷たい空気。 束の間の日だまりの匂い。薄い空色。 部屋で過ごす夜の時間。朝の仕度。 秋と冬を取り巻くものたちは、静かにゆっくりと、 内側へ内側へ向かってゆくものたち。 華やかな春とも、夏の開けっぴろげとも違う。 何処か内省的で、ひっそりし…

手持ち無沙汰

|モノ| 少し前の出先で、瀟洒な雑貨店へ立ち寄った折、 香りのついたろうそくを二つ、買い求めた。 クチナシのと、ユーカリとハッカのと。 店に足を踏みいれると、香りはふんわりと満ち、 するすると引き寄せられるよにして、辿り着いた ろうそくの棚の前に、暫し佇んで居たのだった。 冬支度の整った部屋で、クチナシに火を灯す。 あたたかな橙色のゆらぎは、仄かに香った。 夜長の手元に毛糸玉の無いのが、何とも寂しく、 早く届かぬものかと、洗濯物を畳みながら 首の後ろの辺りに、そっと掌をやる。…

三十路の箪笥の中身考

|雑記| |モノ| 三十路を過ぎると、それまでとは似合う服が変わってくると云うのを、身をもって感じやしないだろか。ことTシャツの類がそうで、若い頃に好んで着て居た比較的襟のつまったクルーネックに、微妙な違和感を覚えるよになる。何が変わったのか。顔つきか。体型か。 三十路を過ぎたとは云っても、たかだか数年のうちに、二十代の頃と比べて、何かが劇的に変わったと云うよな自覚は特に無いのだけれど、実際に着てみれば、何やらしっくりせぬのは事実で、ジーンズにしてもシャツにしても、形や色など…

モンペ娘とべっぴんさん

|モノ| 先日の鎌倉散策の折に買い求めた、湯呑茶碗で白湯を飲む。 寒さが日に日に厳しくなって、体を冷やすまいと、 連日のよにガブガブ、お茶を飲みすぎたせいだろか。 胃液が薄まったのか、どうも胃の具合が芳しく無く、 なるたけ負担の少ない白湯ならば、と思った訳なのだが、 磁器の湯呑でたまに飲む白湯は、舌にちりりととがり、 何やら、江戸っ子が顔も体も赤くして、やせ我慢して 熱い風呂に浸かって居る風で、当然味も素っ気も無く、 白湯などと云うものは概ねそんなもの、とばかり思って居た。 …

悦楽のビブリオテカ

|モノ| |本| 本にまつわる話題が続いてしまうのだけれど。 かねがね、私の興味を惹きつけて止まぬ ものの中に「蔵書印」 「蔵書票」が在る。*1 どちらにおいても、その本来の役割と云うのは、 本の所有者が誰であるか、を示すための ものだが、その世界は実に奥深く、ただの印 と云う役割だけに留まらない。人其々の思い入れが 凝縮され、それ故、非常に趣味的な要素が強く 云わば、本好きの密かな愉しみの一つ、 或いは、デザインも様々のちいさな作品は 芸術の形の一つ、と呼べるよにも思われる…

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