|縷々|
むわんとした風の中に、見上げた雲の様子に、
ほんの少しだけ秋の気配がまじってきて、そろそろ。いよいよ。
あんまりにも長く居座り続けた夏が、乾いた抜け殻を残して
去ってゆこうとしている。みっともない、悪足掻きしながら。
そうして季節が入れ替わる準備をする後ろで、
身の回りに幾つかの切ない出来事を知る。
薄い色した雲の、薄く広がる空を見上げて、
目を瞑って、溜息をつけば遣る瀬無い。
愉しいこと、嬉しいこと。
悲しいこと、切ないこと。
全部まとめて、秋の気配の中へ紛らしてしまおうかな。
残った苦さは、抜け殻みたいに空っぽになって、
風に吹かれて、どこかの空へ飛んでいけばいい。
|音|
そんな折。
韓国仮想散歩中に出会った曲。
曲の主は「김므즈 (キム・ムズ?) 」と云うSSW。方々音盤を探したのだけれど見付からず、どうやら現在はダウンロードだけみたい。
アルバム名の『소복소복, 두리번두리번, 뚜벅뚜벅』(そそくさそそくさ、きょろきょろ、どすんどすん) も良い感じ。
手描き風の素朴なジャケと云い、アルバム名と云い、そこから浮かび上がる佇まいが、楽曲そのものに重なって一つになってゆく。何より、この人の声がとても良いんだな。そっと語り掛けるよな韓国語の響きがやわらかくて、あったかい。
歌詞が韓国語なので、まったく分からないのが残念なのだけれど、ほんの少しの手がかりから感じた、輪郭だとか匂いだとか温度だとか。きっと、そんなに遠くないのじゃないかな。雨の日、何処へも出掛けずに窓際の机へ頬杖付きながら。冬の寒空の下、気に入りのマフラー巻いて白い息を吐きながら。気持ちのよい散歩道を足取り軽く歩きながら、ずっと聴いて居たいなぁ、などと思う。
