双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

春の足踏み

|日々|


三月の異常気象の所為で、例年よか随分と早めにバラが芽吹き、
しかしながら、案の定。このところの気温の急降下である。
一部の株は、やわらかな新芽がチリチリにいじけてしまった。
剪定鋏持って、茶色く枯れてしまったのを切り落とし、
堪らず、ひとつふたつ。長い溜息などつく。
とは云え、大方はしっかりとした蕾をたくわえながら、
瑞々しい緑を明るく茂らせて居る。バラは強いのだ。


そんな折、或る日の水遣りの際にふと気付いたら、
壁に仕立てたつるバラに三つ在ったカマキリの卵から、
それはそれは小さな子カマキリたちが、いつの間にか
ちゃんと羽化して、枝葉の方々へ散らばって居た。
嗚呼、良かった。どの卵も無事に冬を越せたのだな。
子カマキリ皆が皆、全て成長できる訳ではないだろうけれど、
このささやかな庭に生まれた、折角の縁である。
思う存分に生を謳歌し、育っていってくれたら嬉しい。


空模様は相変わらず不安定で、午後は薄曇りから冷たい雨空へ。
一旦は冬の役目を終えた筈のストーブが、結局は再び稼働中である。
春の奴め、気まぐれな双六の途中で”一回休み”を決め込んだか。
足踏みの春に、いちいち振り回されて右往左往するのなら、
いっそ我々も、双六を一回休みにしたら良いじゃないか、と思う。
シャツ一枚ではとても心もとなく、コットンのカーディガンを羽織り、
牛乳を買いに行く。通り沿いの小学校の桜はすっかり葉桜だが、
この花冷えのお蔭で、正門脇の牡丹桜だけは、未だ花を保って居る。
まぁ是も、今日の雨風で散って終いとなるのだろうけれど。

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