双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

すぐそこの春

|日々|

「忍耐は仕事を支えるところの一種の資本である」

と、バルザックは云った。
ここ暫くは、仕事の外へ忍耐を求められて居たけれど、
是が己を支える資本であるのならば、
成る程。いつか、何かの助けとなろう。


少しだけ気持ちが軽くなり、久しぶりで稽古へ行った。
もうずっと、深く呼吸することをせずに居た。
たっぷりと息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
繰り返して集中する内に頭の中が空っぽになる。
お腹の底の辺りからじわじわと、やがて指先へと流れてきて、
体の中を心地良く、気がめぐってゆく。


嗚呼、本当に久しぶりだな。こんなに清々とするのは。
鳩尾の辺りのつかえ。ちくちくとした胸苦しさ。
自らの抱えた事柄へ、更には時世も加わって、
閉塞感に身動きのとれぬ日々が続いて居たのが、
すうと霧でも晴れたみたいになったのだった。


ふと見やった農家の庭先が、光の中にふんわりと淡い。
春はもう、すぐそこまで来て居る。

<