双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

モヤモヤ調査局 其の五

|雑記|


意外な展開と云うか、結末と云うか。
数日後に控えた二匹のメス猫の手術のため、件のお宅へチビ猫用のキャリーケースを届けに行ったら、奥さん「実はそのことなんですが…」え?な、何だ何だ?
曰く、旦那さんの知り合いに畜産農家を営む人が在り、一昨日の午後にその家へ兄妹猫三匹まとめて貰われて行った、とのことである*1。ああ、どうりで昨日はまるっきりチビたちを見掛けなかった筈である。そのことを知らせに行こうと思ったのだが、調子が悪くて起きられずに居たのですみません、と。しかしながら、ゴッドママの手術は予定通り行うので、段取り等を確認、しっかり念押しして帰って来た。


呆気ない。ちょっと拍子抜け、であった。勿論、貰い手が見付かったのは何より。バラけることなく全員一緒は良かった。山の中の畜産農家ではのびのびと暮らせるだろう。と本来なら素直に喜ぶべきところなのだと思う。しかしながら、そんな当てが在ったのであれば、何故もっと早い時点で動いてくれなかったのか。又、チビ猫の不妊手術を間近に控えたこのタイミングは、つまり余計な手術代を出したくないからなのか。等々、まぁ色々と疑問やモヤモヤは残るものの、寝間着姿の奥さんは玄関の内側に顔色も優れず、すこぶる調子が悪そうで、何だか少し気の毒な気がしてしまった。
確かに、この一家の猫の飼い方は、我々の感覚からしたら甚だ信じ難く、随分とだらしなく見えるし、もっと何とかできますよね?と思うところも多々在る。現に、お祖母ちゃんが生まれたチビ猫らを、嫌々ながら捨てに行って居た(本当は犯罪だけど…)ことで、辛うじて多頭飼育は崩壊を免れて居た訳で、是についてはこれぽちの擁護も同情も全くできぬけれども、だからと云って、猫たちへの愛情が無い訳では無いのが、どうにも不可解なところである。恐らくは無知。つまり、そうした教育を今までずっと受けてこなかったのだろな、と思う。
社会の表っ側から隠れて、目にもつかぬよな存在になってしまって居る人たち。今の世の中では自業自得、自己責任。そんな言葉で片付けられてしまうであろう人たち。彼ら自身にひとつも問題が無いとは云わないが、彼らだけに責任が在るとも云えぬのではないか。こうしたことは、お祖母ちゃんから娘、そしてその子供らへ。悲しいかな、世代を渡って連鎖してゆく。(経済的に決して楽では無いかも知れないが) 貧困家庭と云うのでは無いし、(籍を入れた入れないはさておき)家族の体裁も持っては居るけれど、一般社会からは相手にされぬまま、狭い狭い輪の中だけで暮らす人たち。
私は奥さんに寄り添っては居ない。あくまでも寄り添って居る”フリ”なのであり、自らが足元から掬われること無き様、忍耐強く慎重に動いてきた。深入りするつもりなど毛頭無いし、したくもない。只、何と云えば良いのかな。この件が全て片付いて肩の荷が下りても、しばらくの間モヤモヤは残って消えぬのだろな、と思う。自ら望まずに乗っちまった船は、間も無く最終寄港地へ着こうとして居る。

*1:”ネズミハンター”としての仕事も期待されてのことらしい。

<