双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

春の養生

|雑記| |太極拳|


春に体調のすぐれぬ人は多いが、斯く云う私もそうである。頭がぼんやりとしたり、眠気やだるさが抜けなかったり、何となく苛々となったり…。こうした症状を中医学や漢方では「気滞」つまり読んで字の如く、気の巡りが滞って居る状態を指し、それが自律神経の乱れや失調を引き起こして居るものと考える。是は春と云う季節の特徴と関りが在って、”春に三日の晴れ無し”と云われるこの時期は、気候が不安定で低気圧と高気圧が頻繁に入れ替わることに加え、冬に眠って居たものが一斉に活動を始めることからも分かるよに、急激にエネルギーの高まる季節。又、身辺の環境の変化からストレスも増える。冬の”静”から春の”動”へ。さながらジェットコースターのよな変化に心身がついてゆけず、失調を起こしてしまうのが、まさに春なのである。
春は五臓の「肝」と深く関わって居るとされ、肝は肝機能だけにとどまらず、気の巡りを司る臓器でもある。つまり、春と上手く付き合うには、肝の働きを整えることが重要と云える。最も簡単な方法は食養生。春菊や三つ葉、セロリなど香りの在る食材や、薄荷や柑橘類など清涼感の在る食材。苦味の在る旬の山菜。補血作用の在るレバーやほうれん草など、こうした食材を日々の食事へ意識的に含めると良いらしい。又、長い冬の間に体内ヘ蓄積された古いもの、老廃物をしっかりと体外へ出すことは、気だけで無しに、互いに連動する「血」と「水」の巡りをも良くすることとなる。そのためには食養生で新陳代謝を促すだけでなく、呼吸を深くとりながらゆったりと体を動かすことも加えると宜しいかと思う。そこでおすすめしいたいのが『八段錦』である。
八段錦』は八つの動きから成る、中国の気功体操*1。全身に気を巡らせて体を整えるため、大変健康に宜しいのであるけれども、考えてみると、日頃から背中や肩の丸まった窮屈な姿勢で居ることは多く、従って日常生活における我々の呼吸は、短くて浅い。そんな窮屈でせっかちな呼吸では、当然体の隅々まで気を行き渡らせることも、まして胸を開くなんてのも無理だろう。気功体操の深い呼吸の繰り返しや、ゆったりとやわらかな動きは、心地良くじんわりと体全体を温め、固くなった筋肉をほぐし、良い塩梅に整えてくれる。取り込んで丹田に収めた気を全身へ巡らせるよなイメエジで、動きに呼吸(鼻から吸って口から吐く)を合わせながら、肩の力を抜いて大きくゆったりと。



それでは……
さあ、皆様も是非ご一緒に!

道門八段錦(鐘雲龍 道長) Ba Duan Jin

武当山式の八段錦は、他所に比べると動きが大きめで沈み込みも深いのだけれども、我々一般人はここまでせずとも大丈夫である(笑)。自分が心地良いと思える範囲で、無理せず動かそう。又、初めから全ての動作を覚えるのは大変なので、一つを覚えたら次。一つを覚えたら次、と云うよにして、一つずつ順に覚えながら動きを繋げてゆけば良いかと思う。因みに呼吸は鼻から吸い、口から吐いて、常に動きと連動させるのが基本。例えば「押す=吐く」「引く=吸う」と云う具合に、動きと呼吸は自然に重なるもので、徐々に慣れてくると意識せずとも互いが正しく合ってくる筈。


因みに、こちらは少林式。

少林 八段錦 - 林勝傑(全套示範)

基本的な動作は大体同じだけれど、先の武当山式のゆったりとした、円の動きの中へ身を置くよな太極拳的たおやかさに比べ、少林式は見るからに屈強な馬歩の姿勢で、メリハリが効いて居てビシッ!パキッ!とキレも在る。其々の特徴が細部に出て居るのは、実に興味深いものだなぁ。

*1:私の通う太極拳の教室では教えて貰えぬため、えっちらおっちら独学で一通り覚えた次第。

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