双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

たからもの

|本|


本になるのを、ずっと待って居たよ。

とても小さくて、とても儚なげだれど、強い眼差し。
冬の星空で見付けた、たったひとつだけの宝物みたいな、
大切に、大切に。
いつまでも、胸の奥へ、そっとしまっておきたい物語。



”アリエッタ”や”ゆきのこ”みたいに
いっそ”絵の中”へ行ってしまいたい、と思う。
だってこの世は、醜くて、うるさくて、おそろしくて、もううんざりだもの。
人間の世界にも、人間にも、いい加減に幻滅しながら、
毎日そう思いながら、倦み疲れながら、けれどもここに居る。


「Pourquoi?」


アリエッタは留まり続けることを選び、
ゆきのこは留まらず、外の世界へ出ることを選んだけれど、
私は?
私はこれまでも、これからも、ずっと”外”に生きて、
未だ残って居るであろう役割を、すべて果たさなければ。
だからせめて、ときおり目を閉じて絵の中へ想いを馳せよう。
宝物は、いつだって胸の奥にある。

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