双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

たかが一枚、されど一枚

|モノ|


数年前に腰を患って以来、定期的にメンテナンスを行って居たのと、恐らくは太極拳の効果も在るのか。ここのところはずっと調子が宜しく、鍼灸院へ施術に通うことも無かった訳だが、腰とは別に件の腱鞘炎で通う日々なのである。先生に腰の塩梅を尋ねられた際、調子が良い旨を伝えた後で「あ。でも待てよ…」と。
確かに、日常生活の中で腰の痛みを意識することは、ほぼ無くなったとは云え、朝起きる前の暫しの間、腰から背中にかけてがまるで固まったよになって、鈍痛にも似た重たい感じが残ってすっきりしない。一旦起床してしまえば、それ以外では特にどうと云うことも無いため、あまり気に留めなかったが、先生曰く、腰痛持ちの人に多い、誤った思い込みの一つが「敷布団は断然固いほうが良い!」で、症状にもよるが大抵の場合、固過ぎる敷布団はかえって腰痛を悪化させる原因となるらしい。先生のおすすめは、手持ちの寝具に”低反発マットレス”を一つ足すと云うもので、たったそれだけだのに、朝の目覚めが段違いなのだと云う。私の場合は寝台にスプリングマットレスを敷いた上へ寝て居るのだけれども、それなら4cm程の厚みのもので良いでしょう、と。ベッドや敷布団を丸ごと買い替えるとなれば、大掛かりとなるが、手持ちの寝具へ低反発マットレスを一枚足すだけなら、安上がりだしお手軽だ。
「兎に角まぁ、騙されたと思って試してみて(笑)」との言葉に、帰宅後早速、低反発マットレスを買い求めた。有名メーカーから数万円の品が出て居るが、四〜六千円台の品でも十分だと云うことなので、一先ず四千円程のものを購入。翌日、圧縮された状態で届いたため、説明書き通り、袋から出して放っておいたところ、数時間程でしっかりと厚みが戻り、折り目もきれいに消えて居た。しかしまぁ、幾らカバー付きとは云え、どうも頼りないと云うのか、果たしてこの程度で寝心地が変わるものかしらん…。現物を前にして尚、半信半疑のまま、部屋へ運んで寝台のマットレスの上へ重ね、やがて就寝。そして朝が来た。
あれ?いつもの鈍痛、重い感じが…しない?劇的と云うことは無くとも、確かに、明らかに、何かが違う。今まで十年以上も、スプリングマットレスの上に寝て居ったので、些か妙な心地がしないでもないのだが、この目覚めの感覚は全く未知の感覚である。腰が軽いと云うのか、体が楽なのだ。それから二日、三日と日が経つに連れ、低反発の寝心地にもすっかり慣れて、毎朝快適に目覚めて居る次第。
いやはや、参った。たかが一枚、されど一枚。たった四千円でこの目覚めの良さが手に入るなら、もっと早くに試してみるべきであったなぁ。

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