双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

夏の坂道

|太極拳|

午後から、太極拳
新品の上履き、お茶と手拭いをザックに入れて、
古森号を走らせる。暑くとも風は爽やか。
昼下がり、緩やかな下り坂の続く道は静かで、
風の中に蝉の声を聞きながら、想い出す。
ここいらには、幼い頃にほんの一時居たことが在る。
家の建つまでの半年程の間、小さな平屋を借りて、
一歳になる弟と両親と四人で住まって居た。
昔からの大きな古い家が多い。
一面の畑と、見覚えの在る製材所と。
遠い日の記憶と比べても、殆ど変わらぬ風景だ。


重心移動や呼吸の基礎と先週のおさらいとで、
心地良い汗を流し、約二時間少々がまたもや
あっと云う間に過ぎた。二回の体験入門も終了し、
お月謝袋を貰って、来月から正式入門である。
行きの下り坂も、帰りには緩い上り坂。
幼い頃の記憶の中を、ペダルを漕いで再び通る。
途中の小さな商店で、夏休みの小学生男子が二人、
木陰に涼みながらジュースを飲んで居るのを見た。


帰って来て、ざっと風呂を浴びる前に、
覚えて来た動きを一通り復習してみる。
右に体を開いたら、前を向いて、後足をゆっくりと...。
猫らはそんな主の珍妙な姿を横目に、
風の通る窓辺で寝そべって、長く伸びて居た。

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