双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

散髪と着物

|着物|

なかなか都合がつかずに機会を逃し続ける内、
前回の散髪から、早ふた月が過ぎようとして居た。
父方の祖父母の法事までには、しゃんとさっぱり
整えたかったのだけれども、結局間に合わず、
法事当日の午後二時でお願いすることと相成る。
丁度、食事会の店が美容室から近かったため、
その後で、黒い帯した着物のまま出向くと、
「あ。江戸小紋ですか?渋くて素敵ですね」
「黒い帯で恐縮です...」
「良いなぁ。さらっと着物で法事に出られるの」


否々。
とても”さらっと”どころでは無かったのだ。
黒地に中紅の松葉小紋は大叔母から貰った反物で、
折角だから、と自分用に仕立てた着物なのだが*1
一度着たきり、長いこと袖を通さずに居ったため、
おはしょりだの衿元だのが、なかなか決まらず、
思いの外、着付けにもたついてしまった。
やわらかものだのに、何やらぐさぐさである。
着る機会の多いものは、やはり慣れも在るので
勘所が嵌って着易いのだけれど、そうでないものは、
前もって塩梅を探ってみてからでないと、
どうも俄かには、ぱしっと決まらぬものである。


散髪を済ませて清々とした心持ちで、外へ出る。
衿元を一寸直し、帯の後ろをぐっと持ち上げる。
ふと、次の着物はいつかしら、などと想う。

*1:八掛は赤墨色にした。

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