双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

八月のソファ

|忍び| |猫随想|


夏の残りのもたらす暑さを、拙宅の猫らは
各々、気の向く場所に長く伸びて凌いで居る。
忍びことビルボは、大抵が寝台の上を定位置とし、
若旦那ピピンのよに、堂々と茶の間のソファで
寝そべることは一度も無かったのだけれど、
水鉢の水を入れ替えようと、午後部屋へ戻ると、
何故だかソファの上で忍びが眠って居た。
薄い横腹を上に向け、四肢をうんと伸ばしたその様に、
思いがけず亡きアーロンが重なって、瞬間、
心臓がどきん、と云った。



                            アーロン 2011年9月15日撮影


爺様に死の影が近づき始めたのは、丁度
八月の末頃。やはりこんな残暑の折で、
秋が深まって涼しくなるまで、日中の殆どを
こうしてソファの上へ横たわって居たのだったな。


「おい。どうして今日はここにしたの?」
傍らに腰掛けて、そっと横腹を撫でてやると、
薄目を開けたまま、ゴロゴロと喉を鳴らす。
お盆に帰って来た爺様の気配でも、
きっと未だ残って居たのかな。

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