双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

八月の白昼夢

|縷々|

道路沿いの広大な敷地から、巨大な建物が
ぽっかりと消えてしまった。住宅地の中の旧校舎。
廃材は片付けられ、すっかり更地にされて、
八月の熱の下、夏休みで人の気配を失った様は、
まるで、おそろしく静かな爆心地みたいだった。
バランスを失った新校舎。体育館も、運動場も。
おびただしい蝉の声ですら、静けさに吸い込まれ、
その空洞だけが、何処からも完全に孤立して見える。
真夏の中に浮かんだ、白昼夢のよな静寂の光景。

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