双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

『ホビット 竜に奪われた王国』

|映画|



映画『ホビット 竜に奪われた王国』予告編


重なった野暮用を先送りにし、何とか都合をつけて『ホビット 竜に奪われた王国』を観に行って来たのだけれども、期待の第二部は、何だか色々と盛り沢山なのであったヨ。原作はあくまで児童文学として書かれて居るため、話自体もシンプルで実に分かりやすいし、スマウグの最期にしたって、案外拍子抜けする程あっさりとしたものなのである。しかし、それがPJの手に掛かると云うと、こうも分厚くなってしまうのだ。何しろこのお話は、後々の指輪を巡る壮大な物語の序章でもある訳で、原作には書かれない『LotR』へと繋がる重要な伏線や、映画ならではの設定・展開などが、しかしながら至極自然に含ませてあり、それが映画全体に広がりをもたらし、重みと厚みとを与えて居るのは、相変わらず素晴らしい。
又『LotR』の第二部がそうであったよに、こちらの第二部も同じく不穏な底暗さを漂わす。湖の町の寒々と凍てつく佇まい。徐々に力を取り戻しつつある闇の力。そしてそれに呼応するかの如く、ビルボを蝕み始める指輪。作品全体を覆う色調さえ、どんよりと暗い。未だ何処か朗らかな冒険譚の趣の在った第一部とは、大違いである。


とは云え勿論、血湧き肉踊るアクションも忘れない。スランドゥイルの王国から脱獄する件の樽の場面は、激流下りにオークの追っ手も加わって、実に痛快。スピーディで愉しくてわくわくしてしまう*1。それと、所謂ロマンスね(笑)。この一連の作品群にはもっぱら女っ気が無いが、『ホビット』の女っ気の無さも然りで、それ故にエルフの女戦士・タウリエルを新たに加えたのは、製作陣の苦肉の策と思われる。男所帯に女が居れば、色恋の生じるのは世の常。この女戦士が誰に心を寄せるのかと云うと、是が何と、ドワーフきっての男前、若衆キーリなので、降って湧いた恋敵の登場に、高貴なレゴラス王子*2は当然面白い筈が無い。まぁ、このお三人方の恋の行方についてはあまり興味が無いので、勝手にやってくれ給え、と云う感じ(笑)。
それと、やはりスマウグとビルボの場面は、大きな見所の一つだろう。何せシャーロックとジョンである。スマウグを見て居ると、次第にシャーロックと重なってきて困った。尤も、カンバーバッチ氏は爬虫類顔だし*3、本人がモーションキャプチャー演じて居る所為もあろうけれど、声にしたって加工されて居るとは云え、どうにも邪悪な美声のシャーロックなのである。個人的な好みとして、問答の場面では是非とも”Barrel-rider=たるにのるぞう”を採用して欲しかったな。
キャスティングの妙も光る。L・ペイスのスランドゥイルは、性格の悪さと嫌〜な感じが実によく出て居るし、あのしれっとしたすまし顔の、感じの悪いことと云ったらない。S・フライの頭領なんかもう、見るからにべったりと不潔で酒臭そうで、権力にしがみつく業突ないやらしさが滲み出て居て、嗚呼素晴らしい(笑)。それと意外だったのだけれど、バルドが非常に良かったなぁ。彼は後の英雄となる訳だけれども、男手一つで三人の子を育て、本来は谷間の国の領主の子孫であるにも拘わらず、現在はしがない船頭に甘んじるしかない、男の悲哀が良いのだ*4。オーク勢のボルグもなかなか宜しい。アゾグは別段どうとも思わぬのだが、彼はなかなかハンサムな面構えをして居る。ワルの中にも男前は必要である。
そして今回も又、肝心なときにガンダルフは居ないのであった。(しかも又、とっ捕まってピンチ。)

*1:ボンブールの愉快な活躍もお見逃し無く!

*2:それにしても出番、多過ぎない?

*3:まぁ、竜は爬虫類では無いのだろうが...。

*4:この辺りの境遇はトーリンにも通じるね。

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