双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

Three men from Northern Britain

|音|


金曜の夜に催された三人のスコッツマンたちのステージは、実に実に愉しいひとときなのであった。
其々のバンドの曲を其々が代わる代わる歌う形で、時折鍵盤が入る他は基本的にアコースティックギターのみ、と云う素朴な構成だったのだけれど、三者三様の色が在ってちいとも冗長になること無く、まさに一粒で三度美味しい、あっと云う間の二時間だったな。ダグラスは愉快で仕合せな気持ちにさせてくれて(お馴染みの小道具健在)、ノーマンは心底しみじみとさせてくれて(何度も泣きそうになったヨ…)、ユージンはパキっとメリハリをつけてくれて(でも”River Clyde Song”はしんみりと…)。一緒になって口ずさみながら、彼らの歌と共に過ごした青春時代の思い出が、ぶわあと蘇ってきた。
メンバーの重複や出入りなどから、彼らを含むグラスゴーの人脈が、しばしば”small circle of friends”なんて呼ばれるよに、今回のライブも所謂ところの”内輪”であったのか、と云うと、確かにそうした見方も出来なくは無いのだろうけれど、やはり只の内輪とは異なって、一括りにはできない気がする。何故なら彼らの活動は、内輪が内輪の中だけで完結すること無く、音の種となって外へ外へと広がって、世界の様々な場所で芽吹いて育ち、そこから又新たな種を生んだのだよね。
多くが売れる方向へと舵取りを余儀なくされたり、或いは解散を受け入れる中に在って、三十年近くもの間、ずっと変わらずに。自分たちのペースで活動を続けて居ると云うのは、本当に素晴らしいことと想う。だからと云って、頑なと云うのじゃ無い。程好く肩の力の抜けた軽やかさと、懐の深さが在る。派手な名声も、世界中を席巻することも無いけれど。身の丈以上のものを求めず、細々ながらも自分たちの好きな音楽を、良質な音楽を、自分たちの土地で作り続ける。そしてそんな輪の真ん中に、まるでグラスゴーの良心のよな、ダグラス率いるBMX Banditsが居て。
時代が流れても、歳を重ねても、変わらぬ瑞々しい歌心が其処には在るんだなぁ。

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