双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

主の居ない部屋

|縷々|

一昨年のこの日、主の消えてしまった家は、
今尚、そして恐らくは
この先も閉じられること無く、
ずっとそのままに在る。
玄関も縁側の戸も開いたまま。
茶碗。湯吞み。読みかけの本。
削られた鉛筆の跡。映画。レコード。
主が居た頃と何一つ変わらぬ茶の間は、
つい先程まで人の住まっていたよな気配を残しながら、
其処だけが時を止めて居る。
訪れる者は、迎える者の居ない部屋に座り、
スケッチブックを開き、その人の記憶を辿るだろ。


只、主が不在と云うだけの、
永遠に留守の続く家みたいに。

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