双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

若旦那、チビ猫に会う

|若旦那| |忍び|



拙宅の筆頭猫は、誰あろうピピンの若旦那である。筆頭と云ったって、そもそも若旦那一匹しか居ないのだけれども、ここへ来て、新たな仲間が加わろうとして居る。薄々とお察しの方もいらっしゃったかと想うが、私は例のチビ猫を里子に出さず、自ら引き取ることに決めた。何しろ、爺さんの生まれ変わりであるフシが濃厚とあっては、他所のお宅へやれる訳が無い。しかし、拙宅には既に若旦那が居り、しかも孤児で保護された故、猫社会と云うものを殆ど知らぬまま、一人っ子宜しく気侭に暮らして来た猫である。新たなチビ猫を受け入れてくれるか、否か。それが目下にして唯一の懸念材料であり、全ては筆頭猫の若旦那次第なのである。快くチビを受け入れてくれれば良いが、もしそうでなければ、チビ猫と若旦那の双方にとって、実に不仕合わせなこととなろう。
現在二匹の猫たちは其々、別棟で暮らして居る。先週末辺りから、匂いの付いたタオルを交換するなどして、互いの存在の情報を知らせてきたが、若旦那側の感触をまずまずと感じたもので、そろそろ間接的に対面させてみても良い頃かと、数日前。拙宅の物干し場へキャリアに入れたチビを連れて来て、いよいよ網戸越しの初対面を試みた。なるたけ穏やかな空気を作ってやるよに努め、傍らに祈るよな心持ちで見守って居ると、はじめの内こそ遠巻きに眺めて居たものの、恐る恐る、そっと近寄っていった若旦那は子猫を目の前にして、シャーともフーとも云わず、遊ぶときや甘えるときと同じよにクルクルと鳴きながら、何と。網戸越しに鼻で挨拶し、チビのお尻の匂いを確かめたではないか。先ずは当然のものとして威嚇を疑わなかったので、いやはや。全く驚いた。やや緊張と戸惑いの様子は在るものの、時折こちらが差し出したおやつを食べ食べ、興味津々の目をして、チビがボールで遊ぶ様を見るその姿に、嗚呼。やはり是で良かったのだなぁ。若旦那は爺さんのよこした猫。互いに知らない筈が無いのだもの・・・と腑に落ち、安堵した。
以後、毎日網戸越しの対面を続けて居るが、今のところ威嚇らしきは見られず、一緒に遊びたいのか。或いは、珍獣でも見物して居るつもりなのか、網戸へ額をくっ付けて観察の模様。おチビの詳細な健康状態が知れるまで、直の接触は避けた方が賢明であろうから、もう暫くの間は網戸越しの探り合いが続くだろ。ともあれ、何事にもあせりは禁物。こうして日々少しずつ会わせながら、ゆっくり猫らの歩調で慣れてゆけば良いと想う。

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