双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

続・続・裕福な御婦人のための靴下

|手仕事|


一先ず、今回依頼分の靴下は是で全て引き渡し完了。



糸はアクリル混の中細糸を、針は一号針を使用した。写真だと少々明るめだが、実際の色は臙脂寄りの深い赤。重ね履きにも対応できるよに、程好くゆったりめとした。


さて。依頼主である裕福な御婦人は、御歳七十余。*1お洒落ですらりと背高、手仕事の品に対して深い理解を持った御婦人で、出来上がった品を手渡す度に大層喜んで下さる。「未だ履くのが勿体無くて、いつも箪笥から取り出して並べては、うっとり眺めて愉しんで居るのよ。履くときにはズボンの裾を一寸折り返したりして、靴下がちらっと見えるよにして履きたいの。ウフフ。」
そして同日、早速に次なる依頼をお受けした。コートの中にも着られるよな、少し丈長のベストを御希望とのことで、仕様は前開き。色は薄いグレイとだけ指定され、後は信頼して全てお任せするわ、と仰る。編み手冥利に尽きる、とは実にこう云うことであるなぁ、と想う。


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【左】履き口。よく在るゴム編みでは無く、こうしたスカラップ様の縁編みにするだけで、俄然靴下の表情が乙女らしくなるのだ。透かしの入った模様との相性も抜群。
【右】模様拡大。規則的な模様の繰り返しは単純ながら、精神の平穏を得るには最適である。ちくちくと進める内に、知らず無心となって平らになってゆく。



靴下を編むのは何であれ愉しいものだが、とりわけ踵部分から先の作業が好き。嗚呼、靴下を編んで居るのだなぁ、と実感できる。


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余談。
御婦人が以前に北極圏を旅行した際のお話。現地で買い求めた毛糸の手袋を、転んだ拍子に泥だらけにして途方に暮れて居たところ、宿泊先のホテルのコンシェルジュから「毛糸ならシャンプーで洗った後、リンスで仕上げると宜しいですよ」と教えられ、以来毛糸の小物は入浴時にこの方法で洗って居るのだと云う。「洗濯機でガラガラより、この方がずっと安心だし、お風呂のついでで簡単でしょ?」成る程、目から鱗。実に良いお話を聞いた。



|本|


こちらのテキストより”Waving Lace Socks”を。

Favorite Socks: 25 Timeless Designs from Interweave

Favorite Socks: 25 Timeless Designs from Interweave

*1:美しいモノ、心惹かれるモノたちを、身近に置き愛でることが何よりの喜びなのですって。「実際に使っても使わなくても構わないの。だって、そう云うものって見て居るだけでとても仕合せな気分になれるでしょ?」ご尤も。

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