双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

街の本屋の文具売り場

|雑記|


駅前の本屋へ、定期購読の雑誌を数冊、
受け取りに行ったときのこと。
所謂”街の本屋”であるその店、今では
すっかり名ばかりとなった駅前通りに建ち、
けれど街ではいちばん古い、
そして殆ど唯一の、本屋らしい本屋である。
店の中央の通路で分かれた売り場の
半分では、書籍や雑誌を。
もう半分では、文房具や事務用品を扱って居て、
特に文具売り場の木製什器には貫禄が在る。
是と云う用は無くとも、びっしりと品々の収まった
棚々を見て廻るのが愉しいのだけれど、
この日は生憎、十分な時間が無かったので、
奥の帳場で雑誌を受け取って出口へ向かう。
と、文具売り場の通路へ、見覚えの在る背高の姿。
何冊かの帳面と筆記具とを手にして、じっくりと
一本のボールペンを選んで居るその歳若い青年は、
よく私の店に来てくれるお客の一人であった。
今や文房具など、百円ショップや量販店の
安価な品で安易に済ませてしまう人の多い中、
こうした昔ながらの本屋の文具売り場で、
折り目正しい文房具を買い求めるよな若者が、
私の店のお客で良かったな。
そう想うと、何だかしみじみと嬉しくなった。

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