双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

最も素敵な手姿

|戯言|


つい先頃。
自分の手姿の最も様になるのが、
”中指を立てる”仕草である
と云うことに気付いたのである。*1


何しろ、この私の手ときたら、
ごつごつと節ばって、ずんぐりとして、
何処をどうしたところで、
如何なる手仕草をとったところで、
ちいとも格好がつかぬのだけれども、
それが何故だか、この
”中指を立てる”手仕草についてだけは、
握った拳の塩梅と云い、
其々の指との兼ね合いと云い、
前後左右斜め何処から見ても、全く
惚れ惚れするよな姿なのである。
と、こんなことを云うと、
「あなた、馬鹿をおっしゃい。
そもそもが、一般的な日常生活において、
中指を立てる機会など、ほぼ皆無に等しく、
もし仮に在ったにせよ、立てた相手を激怒させ、
半殺しの目にあうのが関の山ですよ」
成る程。それはご尤もである。
私とて、自ら棺桶の蓋を開け、
其処へ入るよな過ちは御免被りたいし、
分相応の料簡は心得て居るつもりである。
であるからして、非常に横柄な客や、
不躾な客の理不尽に接した際など、
盆を持ち帰りながら、ふつふつたる胸の内を抑え、
壁の後ろだとか、お勝手だとか。
誰も見て居らぬ所まで行き、こっそりと中指を立てて、
そうして独り、ほくそ笑むのである。
「けしからん。何がこっそりだ。
いい歳をして甚だ悪趣味だ」
まあ、御仁。そう仰らず。
それくらいは、気の毒な四十路風情の
ささやかな、かあいらしい息抜きと思って、
ひとつ、目を瞑って頂きたいものと思う。

*1:ちなみに左手。

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