双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

年の瀬随想

|雑記|

いつ頃からか。
年の瀬の、気忙しくも賑々しい空気を
肌で感じることが難しくなった気がする。
想えば昔は元旦に商いをする店なども、
一部を除けば殆ど無かったから、
年の瀬が近付くと、方々の店々を廻って
人寄せの準備や正月中の入用を済ませ、
念入りに掃除された玄関先には、
何処の家でも、正月のための御飾りが置かれた。
そうやって年を送り、年を迎える心づもりを、
折り目正しさを、暦に感じ入ったものだったが、
その暦の薄らいだ近頃では、元旦から店が開き、
備えなどせずとも、必要なものがいつでも手に入り、
家々の玄関先の正月らしい飾りも、支度も、
初詣へ出掛ける人々のきちんとした身繕いも、
目にする機会がめっきり少なくなった。
子供の頃、正月は今よりもずっと特別だった。
だから年の瀬には、慌しい喧騒の中にも
きゅっと気の引き締まるよな空気が在ったし、
新年を迎える前の、ささやかな厳かさが在った。
昔は昔。時代が変わったのだ。
そう云われれば、尤もそれまでなのだろうけれど、
折り目正しい特別が薄らいでゆくのは、
やっぱり、寂しいものだな、と想う。

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