双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

イーニドガールと曇り空

|雑記|


時折小雨のまじる、肌寒い曇り空の水曜日。
ひとしきりして落ち着いた遅い昼の頃、
駐車場に旧型の四輪駆動車が、一台。
あ。あの子だ。*1
ついこのあいだ、暫く見掛けないけれど、
どうして居るかな、って考えて居たばかり。
程無くして入って来た彼女は、独りきり。
おかっぱの髪を少しだけ短く切って、
けれど何だか、暗い浮かない顔付きで。
奥の卓に座って、ぼんやりお昼を食べて。
食後の珈琲を持って行ったら、
心疲れた風に、只、頬杖をついて居た。
何かしんどいことでも在ったのかな。
ノース・マリン・ドライヴと鉛色の曇り空。
独り考え事するには、こんな日の方が良い。
ぎゅうとなった強張りを解いて、
肩から荷を下ろしてゆけば良い。
「どうそ、ごゆっくり」
ほうじ茶を置いて、そっと卓を後にする。
音楽がベン・ワットからホセ・ゴンザレスに変わって、
それも、もうすぐ終わろうとする頃。
彼女が帰り支度をする気配が聞こえた。
ゆっくりできましたか?
お釣りを渡しながら、そう添えると、
ふっと、やわらかに口元が綻んで、
はい。
って、一寸はにかみながら、笑った。
良かった。
ドアの向うにあの子の後姿を見送り、
またいらっしゃい。心の中で呟いた。

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