双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

開発と思惑

|雑記|


日めくり暦を一枚めくると、今日はこんな一文が記されて居た。

譲り合えば成り立つものを意地張り合って壊している。

成る程。確かにその通りであろう。


|若旦那|


若旦那の肉球。脱皮がほぼ完了したのか、本来のやわらかな風合いが戻って来たよである。しかし犬遊びを再開するには、未だ時期尚早かとも想うので、代わりにねこじゃらしを使うなどして、こちらは様々工夫を凝らして居るつもりなのだが、当の本人にすると、斯様なものでは満足できぬ、と然も云いたげの様子で、相変わらずの退屈顔だ。
そんな矢先の或る夜更け。寝台にうつらうつらして居ったところ、何やら板間の暗がりから、ゴロゴロゴロ。ズサッ。ゴロゴロゴロ・・・・・と奇怪な物音がする。怪しんで寝台を抜け、寝惚け眼に電灯をカチと付ければ、果たして其処へ居たのは、きょとんと例の豆鉄砲顔した若旦那であった。
「夜更けにまた何をおっ始めましたか?」この猫は実に人の言葉を解すので、主がその様に問うたところ、クルルとひとつ鳴いた後、箪笥の角辺りへ行くと、こちらへ向かって何かを転がしてよこすのである。「スーパーボール?」いつぞや、小僧先生がお泊りにいらした際に忘れていったものらしい。
ふむ。どうやら奴めは、犬遊びの催促へ主が快く応じぬために、一人でもできる新たな遊びを開発、編み出したものと想われる。是がどうして、なかなか考えたもので、犬遊び(a.k.a.王冠投げ)には、自らの他に投げ手が必要であるけれども、スーパーボール転がしであれば、一人勝手に遊んで居られるし、手加減によっては転がる方向も不規則。又、素材の性質上適度にバウンドもするため、実に愉快で退屈しない、自由度の高い遊び、と云う寸法だ。しかしながら、時刻は既に丑三つをまわる頃。「大変に感心なことで結構ですが、いい加減もう寝ませんか」ひとしきり遊んで満足したと見え、この提案を受け入れた様子の若旦那と共に、二人して再び寝台へ戻ったのであった。
そして又。近頃ひとつ困ったことには、如何なる思惑が在ってのものか。主の知らぬ間に、王冠若しくはスーパーボールを咥えていって、是を餌場の水飲み鉢の中へぽとり落とし込む、と云う新手にして謎の行いに及ぶ若旦那。*1それを見止めた主の反応を、逐一柱の影から窺って居るのが、更に謎なのである。



こう見えて、彼なりに色々考えて居るのらしい。

*1:しかも、自分が好きでしたことを「この水、異物入りだヨ!こんなの飲めないヨ!中に入ったのを取り出して、新しい水と入れ替えておくれ」と云う。

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