双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

自転車と私

|モノ|


ご存知の方もいらっしゃるかと思うが、私はこの時世、携帯電話はおろか、自動車の運転免許すら持たない人間である。当人にとっては何ら不便を感じないものの、こと田舎町においては、車は持たねばならぬもの。或いは、車無くしては生きられぬ。そう考える人間が驚くほど存在するものであるからして、そんな所で暮らして居れば、何かと気を遣う。否、気など遣わずとも良いのだろうけれど、そうせざるを得ない場面が多々と在る。
例えば、街場の飲食店などで会合が在ると云うと、こちらは歩いて帰るつもりで居っても、向うが放っておいてくれないのだ。「え〜!だってここから歩いたら三十分も掛かるヨ?」こちらにしてみたら、三十分程度、全くどうと云うことは無いのだが、歩いて二三分の店へさえ車で移動する人たちにとっては、到底理解の範疇を超えるのである。そうなると、押し問答の末、誰が送っていくだの何だのとなって、こちらは面倒をかけるつもりが無くとも、結局は面倒をかけることと相成ってしまう。更に母方の叔父は「免許の無い人間など、一人前の人間、社会人とは認めない。」と云う極論の持ち主で、元々反りは合わぬ同士だが、その偏見たっぷりの言葉が、意地でも自動車文化になんぞ迎合するものか、と云う妙な意地みたいなものとなって、どうやら未だに私自身の何処かに根強く残って居るらしく、又、そうしてそんな環境に在るうち、私用のために、乞うて誰かの車に乗せて貰うことを、極力避ける厄介な癖がついてしまった。だから、余程のことが無い限りは、頻繁に遠方へ出掛けることも無いし、然程に大きな用でなければ、あっさり諦める。大抵の場合、徒歩と公共の交通機関を使って済むものの、それが出来ぬよな場所。或いは、時間の制約が在る、となるとなかなか難しいのだ。
しかし、昨年に組合庶業部の委員となったことで、度々会合に召集される機会が増えたと云うのも手伝って、ここ数ヶ月、いよいよ策を練らねばならぬなぁと考えて居た。ふむ、丁度良い機会だ。いっちょ自転車を買うか・・・。




どうせ買うなら、遠出もできるクロスバイクが良いだろう。かと云って懐との兼ね合いも在ることだから、三万円台程度の手頃な価格帯が理想である。しかし調べてゆくうちに、私自身の体躯が大きな問題となってきた。当方身の丈154cm。となれば当然、腕も脚も平均よか短いとくる。しかも一般に出回って居るクロスバイクの多くは、当然ながらチビ仕様にはなって居ないため、チビにはチビ用の車種を探すしかないのだが、そうなると価格帯は勿論、形も色も選択肢が極端に狭くなってくる。そんな限られた中から引っ掛かってくるものと云えば、ぐんとお高い車種や、ママチャリ風の車種。或いは、折角気に入ったものを見付けても、色がピンクなどのパステルカラー中心であったり、そうかと思えば、妙に女子好みな、かあいらしさの過ぎる風体であったり・・・。日々候補を探し回ることに疲れ果てながら、遂に三車種程に絞り、其処から更に思案を重ねた末、心も腹も決まったのであった。


そして。探しに探してようやっと購入を決めたのが、この車種。

MERIDA CROSSWAY 50


白、黒、薄茶などの在る中から、迷うことなく青を選択。是に、走行中のしっぱね、及びズボン裾の汚れや巻き込み等を懸念して、フロント・リアの両方に簡易式のフェンダー、部分タイプの小ぶりなギアカバー及びチェーンカバーを付けると、送料等全て含めて、国民年金三か月分と少々。辛うじて予算内である。ところが、糠喜びしたのも束の間。ウェブ上では”在庫在り”となって居たものの、翌日の連絡で「メーカーヘ問い合わせたところ、在庫が無い」との返答が。勿論、是で諦めた訳では無い。こんなことも在ろうかと、他の幾つかの店舗でも似たよな価格帯の同車種を探しておいたのだ。しかしながら、どうしてこうもついて居ないものか。二軒目、三軒目でも「メーカーヘ問い合わせたところ・・・・・」である。更に在庫の在る店舗でも、価格が予算内に収まらなかったり、希望の色やサイズ、必要なアクセサリが無かったりで、結局は泣く泣くこの車種を諦めることとし、そうしてぽつねんと。この間に費やされた労力と時間とでもって、心身共にすっかり、疲弊しきって居たのであった。


続く。

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