双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

イーニド・ガール

|雑記|


半年ほど前から、時々来店するよになった女の子が居る。
いつもTシャツ以外は黒を着て、足元はDr.マーチンの八つ穴。色はチェリーレッド。小柄で色白で、ぽっちゃりとした膨れっ面に、丸い形のおかっぱが良く似合う。彼女を初めて見たとき、ダニエル・クロウズの漫画に出てきそうな子だな、と想った。実際『ゴーストワールド』でソーラ・バーチの演じたイーニドに、一寸似て居る。けれど、一緒に来る子はレベッカではなくて、何処か『なまいきシャルロット』のルルをずっと大人しくしたみたいな、小柄で痩せっぽちの女の子。そばかすの在る小さな顔へ大きな黒縁眼鏡をかけ、やっぱりTシャツの他は黒を着て居る。
二人は大抵、一番奥の二人掛けの卓に座って本を読む。おかっぱの子の傍らには、ラッキーストライクが置いてある。彼女の乗って来る車には初心者マークが貼って在るから、きっと未だ二十歳かそこいらと想う。同じ年頃の子たちが乗るよな、かあいらしい車じゃない。彼女の小さな体には凡そ不釣合いな、大きな四輪駆動車は旧型で、きっと中古車を探し回って、ようやく見付けたのだろ。女の子らしい飾りは一切見当たらず、男の子の車と見紛うくらい、素っ気無い。決して頑なに気負って居る訳ではないけれど、それでも自らの強い意思でもって今様の流行だとか、皆と同じであることを努めて避けて居ることは、十分に分かる。へえ、今でもこんな子が居るのだな・・・。
いつだったか。近くの卓に座った年頃の近い女の子らの、きゃあきゃあする様を見て、煙草をくゆらせながら、ひとつ。彼女が少し軽蔑の混じったよな、小さな溜息をもらしたのを見たことが在った。私も若い頃は、こんな風だったろか。彼女が来る度、遠くて近い過去を振り返っては、何だかくすぐったい心持ちになる。


|映画|


ゴーストワールド [DVD]

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そんな女の子。
彼女たちほど饒舌ではないけれど、ね。

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