双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

Like learning to wear a ring or a pair of eyeglasses

|雑記|



あいつが彼岸へ旅立って、一週間。宙ぶらりんになった夜は、静かに編み針を動かして過ごした。こんなとき、私に編み物が在って良かった、と想う。昨日は偶然日を同じくして、長屋のご近所さんから素敵な葉書が届いたり、素敵な贈り物が届いたり。お心遣いをどうも有難う。初七日終わるまで、一寸ばかり留守にして居りましたが、またひとつ。宜しくお願い申し上げます。

Give yourself time, Arnold. It gets better... But, Arnold, it never goes away. You can work longer hours, adopt a son, fight with me, whatever... it'll still be there. But that's all right, it becomes a part of you, like learning to wear a ring or a pair of eyeglasses. You get used to it. And that's good.


「時が癒してくれる。だけど、アーノルド。傷は消えない。 仕事しようが、養子を育てようが、私と喧嘩でやりあおうが、その傷は消えずに残って、体の一部になる。指輪や眼鏡みたいにね。でも、 それで良いんだよ。傷にも慣れてゆく。 慣れはしても、忘れはしない。それで良い。」


『トーチソング・トリロジー』と云う映画の中で、失ったつれあいが恋しい、と呟くゲイの息子に向かって、アン・バンクロフト演じる母親が語りかける科白が好きだ。
心にぽっかりと開いた空洞。お前の居なくなった箇所は、決して代わりの何かで埋まりやしない。けれど、それで良いのだと想う。ママの云うよに、生傷が乾いて癒えた後も、お前と云う傷痕はずっと残って、やがて私の一部となってゆく。そしてきっと、ふとした折に小さく疼いて、小さく想い出すんだ。

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