双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

ガリガリポンと秋の空

|爺猫記|



爺様近況。療法食一日分の分量を、三日かけてようやっと食べて居るよな状況ではあるけれど、毛艶も顔もきれいで、別段、涎や目脂が出る訳で無し。見目は如何にも病に弱って居る風に無い。それがいざ抱き上げてみれば、まるで羽枕か何かみたいに軽くて、すっかり骨ばった身体の感触が直に伝わるものだから、その慣れぬ落差と腕の中のひどく小さな様に、ぎゅうと胸苦しくなってしまうのだ。ガリガリ、なんて云うと哀しいので、せめて”ガリガリポン”と云う。昨日からは殆ど餌を口にせず、極力動かぬ省エネモードで過ごして居る。
欲意地ばった我々人間と違い、犬猫らと云うのは、己の死期の近いのを悟ると水や餌を徐々に遠ざけ、身体の中をきれいにして逝くのだと聞くから、こうなるといよいよお迎えが近いのかな…。つい先月まではあんなに元気だったのに。いったい何の因果かと、遥々遣る瀬無い。
ほら、爺さん。見てご覧。もう空がずうっと高いね。脇腹をさすれと目で促されて、はいよと撫でさすってやれば、喉の奥の方でグルグルやった。

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