双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

セーター、父へゆく

|雑記|


意気込んで取掛かり、昨年末に仕上げた
アランセーターは結局、父の元へ行った。*1
どのみち、自分で着るには大き過ぎたし、
お世辞にも似合うとは云い難かったのだが、
試しに父へ着せてみれば、是が初めから
父に合わせて編んだよに、寸法はぴたり、
着姿も又、実にしっくりと馴染んで居る。
「手編みのセーターなんて、随分昔に
おふくろに編んで貰ったの以来だなぁ。」
どうせあげるなら、もっと早くにして居れば
良かったか、と思う。正月二日からの三日間。
母や叔父夫婦らと共に京都へ出掛けた父は、
その内の丸一日を別行動で、独り。奈良は
斑鳩の里に過ごしたのらしい。着て行った
外套が思いの外重たく、歩き辛くて困ったと
こぼして居たくらいだから、勿体つけず
早々に渡せば、きっと旅先で重宝したろう。
それを知ってか知らずか。父が云った。
「何だよ。去年に編み上がってたんなら、
出掛ける前にくれれば良かったじゃねえか」
そりゃそうだけど、何せ骨の折れる仕事でさ。
編んですぐに手放すのが惜しかったんだよ。
「ん。有難く頂きます」
悔しいが、気に入りの紺色の鳥打帽を被った
父に、灰色のセーターは良く似合って居た。*2

*1:https://hobbiton.hatenadiary.jp/entry/20101229

*2:次こそは絶対、自分のを編むのだ!

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