双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

毛糸と風景

|手仕事|

アラン編みのカーディガンに取り掛かって
数日が経ち、後ろ身頃をじきに編み終え
ようとして居る。元来がせっかちな質故に、
いつもならば、つい気が急いて他の部分も
続けて編んでしまうところなのだけれど、
一先ず小休止。合間に小物を挟むなどして、
のんびり構えて。今年はじっくり十分に、
時間をかけて仕上げたい、と想って居る。
アラン編みに強く心惹かれて止まぬのは、
複雑な編み模様の習得や、行程そのものの
愉しさに依るのは勿論だが、雄雄しく堅牢な、
その無骨の佇まい。編地をじいと眺めて居ると、
石垣を渡って低く吼える風や、荒くうねった
灰色の海。漁師たちの網を繕う風景らが、
ぼんやりと浮かんでくるよな気がするのだ。
未だ見ぬ土地の風景に遠く想いを馳せながら、
一針ずつ。編み針を動かしてゆくのは良い。


何しろ、秋は始まったばかり。
そして冬は未だ、先の季節。

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