双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

ねぐらの中の小さなねぐら

|縷々|


季節の狭間。僅かに残った夏と秋との
繋ぎ目の、不確かなリズムをどうして
掴まえたら良いのか、未だ分からずに居る。
そんなときは自ら進んで、心もとなき感傷を
迎え入れようか。そっと掌で包むよにして。
六畳の部屋に広げたテントは、ほんの少しだけ
ゆとりのある一人用で、ブランケットを二つに
折って中へ敷き、其処へ寝袋を持ち込めば、
半月を横たえた形の、ささやかなねぐらとなる。
部屋にテントを出したのは、久しぶりだな。
ランタンの小さな灯りの下、寝袋へもぐり込んで、
北の動物たちの物語を辿るうち、安らかな孤独に
ふうと心ほどけて、呼吸がゆるやかに繋がってゆく。
そう。寝袋へもぐり込むのは、いつだって好きだ。
あったかで寡黙な寄る辺みたいに想える。
丁度、こんな風な心持ちの夜なら、尚更に。
灯りを消して、暗がりの中の暗がりに目を閉じる。
夜更けの窓を叩くよに、やがて雨の音がした。

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