双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

女学生手帖

|回想| |本| |音|


先日、鳩山郁子氏について書かれた非常に興味深い考察 → を読み、ふむふむと深く頷く。氏が実は、ステレオタイプな少女漫画の洗礼を殆ど受けて居らぬこと。それ故なのか、既存の漫画の枠に自身の描きたいものが当てはまらず、やがて 『ガロ』 にそれを見出したこと。編集者であった父上の影響で、手塚治虫つげ義春水木しげるなどを読んで育ったこと、などなど。また、その作風や構造に関しても (足穂は云わずもがなだけれど)、既存の漫画そのものからよりも、むしろ当時のニューウェーヴなど、サブカルチャーの影響が色濃いと云う記述や、更に 『ペヨトル工房』 との関連性へ及ぶ部分には、大変納得のゆくところである。全7回の鳩山郁子論。氏の作品と平行した関連コラムも含めて大変面白い記事なので、興味を持たれた方は、是非お読みになることをお薦めしたい。

カストラチュラ

カストラチュラ

初期の短篇の数々も素敵だけれど、やはりこの作品の持つ世界観は別格か。
”傑作” と云う言葉では、全く足りないのだ。言葉が見付からない。



さて。その、鳩山作品を読み解く考察の中で、所謂 「セゾン・カルチャー」 に言及して居た箇所が在ったもので、セゾンの術中にまんまと陥って居た己の憐れな(笑)女学生時代が、ついよみがえってしまったので
女学生ホビの田舎ちょこっとセゾン回顧録
などと題して、困ったときの振り返りなんぞを…。
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『PARCO』 って聞くと、未だに是が浮かぶ世代。
ベルナール・フォコン!


フォコンで想い出した。高校では図書委員長を一年間務めて居たのだが、数名の委員生徒は年に一度の買い入れに同行できたので、其処では職権を乱用し、フォコンの写真集だとか澁澤龍彦だとか、自分ではなかなか買えない本ばかりを、ごっそり選んだ。


飛ぶ紙―ベルナール・フォコン写真集 (PARCO Vision CONTEMPORARY)フローラ逍遥

あの本たち、未だ母校の図書室に在るのだろね。フフフフフ・・・。



そして、当時のM市中心部に在った書店の中でも、駅前の西武内の 『リブロ』 が、とりわけ尖がった所を一手に引き受けて、異彩を放って居たのだった。*1 リブロの売り場面積自体は小さかったけれど、澁澤、足穂、サド、バタイユ、今昔の幻想文学から、映画、絵画、写真。ダゲレオ出版やら 『ユリイカ』 『スタジオボイス』。ペヨトル工房に 『月光』『牧歌メロン』(うわわ〜)。丸尾末広やガロ周辺の作家などなど。ゲージツから怪し気なのまでが混沌と並ぶ一角は、実に魅惑的で、何処か後ろめたい匂いがしたものだったな。


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その 『リブロ』 のすぐ隣に在ったのが、映画館 『テアトル西友
ここでいちばん記憶に残って居るのは、この映画。

座り心地の良い椅子ではあったが、それでも眠らなかったぞ。


照明を落とした瀟洒な通路に足を踏み入れる度、女学生ホビの心は静かに躍ったものである。深い青の座席は上等で座り心地が宜しく、訊いたところによれば、フランス製の特注(!)であったらしい。ちなみに最後に観た映画は 『長江哀歌』 で三年前。その翌年には閉館が決まり、最終上映作品には 『ニュー・シネマ・パラダイス』 が選ばれたと記憶して居る。泣かせるねぇ。


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当時の 『無印良品』 は、路面店として独立して居たのだったが(後年になって駅前の西武内へ移転)、装飾の一切を廃したスケルトンな文房具の前に、田舎娘はただただシビレたヨ。制服の中に着る白いシャツ、エジプト綿の二足組ソックスなど、何かと云えば無印であったなぁ。(あ、今も?)


セゾンカルチャー崩壊後も、無印が依然として健在なのは、恐らく、アートだの何だのとは違って、その敢えて意識したであろう質実剛健 (だけど、ちょっと垢抜け) やミニマルなコンセプトが幸いしたのかも知れない。今でこそ、嗜好と生活をトータルで考えることは当たり前となったが、当時はそれが斬新であり、だからこそ大衆性との区別を明確に、他とは一線を画することに成功したのだろうと想う。今と昔とで多少の変化は否めぬが、 ”無印” と聞いて我々が思い浮かべる印象は、しっかり確立されて居るよな気がする。やはり直接暮らしに関わるものは、強い。まして、それがころころと姿を変えることなく、ブレなければブレぬ程、強いのではなかろか。


うら若き女学生であった80年代後半〜90年代前半。セゾンだ何だと云ったところで、所詮は地方だから、雑誌やテレビなどを介したり、或いは、近郊の西武M店にほぼ限られた体験でしかなかった訳だけれど、田舎のおぼこい女学生にとっては、それでも十分に刺激的だった筈である。学校が終わった土曜日の帰り、そのまま電車に乗って出掛けたときは、学校近くのラーメン屋ではなく、西武の二階のデリカテッセンでお昼を食べたのを、甘苦く想い出した。
が。それ以降は着々と、セゾンとは反対の方向へ転がってゆくのであったよ…。


■おまけ■


中学生の頃、カセットテープはいつも 『マクセルUD2』 だった。*2
マクセルUDシリーズは、CMも格好良かったねぇ。

マクセルカセットテープCM スタイル・カウンシル



Curiosity killed the cat!懐かしい!大好きだった。
確か、この人たちもUDシリーズのCMに出て居た記憶が…。

Curiosity Killed the Cat Misfit (video with lyrics)-HQ

使用曲は是じゃなくて 『Ordinary Day』 だったよに想うのだけれど。



修学旅行で訪れた京都は新京極のレコ屋にて、ざらざらのブートビデオ購入(笑)。
ナイフ
多分 「Top of the pops」 を録画したやつ。


高校に上がって、夢中になった。解散後だったけれど。
ザ・クイーン・イズ・デッドザ・スミスミート・イズ・マーダーストレンジウェイズ、ヒア・ウィー・カム(紙ジャケット仕様)ハットフル・オブ・ホロウ


是も良く聴いたな。
If I Should Fall From Grace With GodWONDERFUL TIME

*1:我が校が契約をして居た大型書店Tは、リブロを意識したと思しき ”リブロっぽい” 売り場を設けては居たのだが、やはり遠く及ばなかった。

*2:高校生になってからは 『TDK-SA』 に。

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