双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

川のむこう側には何があるのだろう。

|旅| |回想|*1



マルディグラの喧騒の去った後も、ニューオリンズから幽霊たちの幻影に似た、気だるい痕跡が消えることはない。滞在の終わり、蒸気船に乗った。ケイジャン・クィーン号。ミシシッピの川面を渡った風は、南部の湿り気をふくよかに抱く。ねえパパ。川のむこう側には何があるの?ああ、あれはまた別の町だよ。デッキを通り過ぎる親子の会話が、汽笛に溶けて遠のいた。少女のサンドレスは淡いグリーンだった。アルジェ。対岸の小さな町は、まるでいつからか時計の止まったまま、今もまだ長い昼寝の中にいるように見える。大通りが川にぶつかって終わる場所から、あの小さな渡し舟に乗って、むこう岸へ行ってみれば良かったのかも知れない。もしかしたら、眠ったまま取り残された町で、何かを見つけただろうか。数時間後、私はグレイハウンドのバスディーポで、メンフィス行きのアナウンスを聞いていた。何処かで焦げ付いたベーコンの匂いがした。チケットを拝見。メタリックシルバーの車体は、再び夜を抜けてゆく。 ( New Orleans / Louisiana )



*1:キューピー・アメリカンマヨネーズ風に仕立ててみました。

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