双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

仕事着考

|モノ| |手仕事|


昔から仕事着 (作業着) の類。所謂 「ワークウェア」 と云うのが好きで、実際の仕事は勿論、普段着るものにも色濃いよな気がする。子供の頃から、叔父らが工場で着る 「ツナギ」 も好きだった。着古して色褪せて。工業油の染みだの、ほつれだのが沢山できた、無骨で堅牢な佇まい。母方の祖父がノコの目立てをするときに付けて居た、分厚いデニム地の作業エプロンも。父方の祖父の藍染の半纏も。其々の仕事に其々の仕事着が在って、其々の確固とした佇まいが在る。仕事に人となりが宿り、そしてそれは仕事着にも表れる。単なる機能性だけでなしに、仕事に適した工夫が結果的には個性となって居るところや、始めは只のまっさらであったものが、仕事と共に人と共に、段々とこなれてゆく様が、恐らく好きなのだと想う。
若い頃に買い求めた古着のワークシャツは、今でもしっかりと健在だ。大抵は男性用で作りが大きいため、自分で丈を詰めるなどして、是には少しの手直しを加えてある。航空会社やガソリンスタンドのシャツには、仕事のための服でありながら、何処か力の抜けた愛嬌の在るのが良いし、充分に着古したオーバーオールやペインターパンツの質感も、また良い。
中でも 「ワークコート」(外国の日常風景に見る、清掃員や職人の小父さんなどの着て居るよな、明るい青の、あの上っ張り。) と云うものに心惹かれて久しく、ああ云う丈長の上っ張りが在れば、調理の際のハネや水仕事も気後れせずに済むであろうし、実に心強いだろなぁ、と常々想うのだけれども、しかしながら是については、実際に上手い具合のを見付けることがままならず、たとい見付けたとしても値が張る (輸入品だと云うので、元値に随分と乗っけてあるとしか想えぬ) か。或いは、手頃な値でも寸法が大き過ぎて諦めるかで、今まで手に入らず終いとなって居た。*1
ところが、ものは考えようである。この手の上っ張りと云うのは、大抵が丈夫なツイル地で出来て居るものなのだが、たまたま先日の出先に見掛けた特売生地のワゴンの中に、まさしくあの上っ張りの青いツイル地を見付け、迷う事無く2mの着分を二つ買い求めた。何しろ、ベージュだの紺だのに比べると、活用範囲の極めて限られるあの妙に明るい青であるから、是だけが売れ残ってしまったのも頷けるが、*2捨てる神在れば、こうしてちゃっかり拾う神も居る訳で、地味に辻褄が合うものだな。しかし今まで、どうして自作を考えつかずに居たものか。
さて。手持ちのテキストの型紙の中より、最もあの上っ張りに近いものを探し、カバーオール風ジャケットの型紙を使うこととした。本来はフード仕立てのところを襟に代え、両脇二つのポッケの他に、胸にも小さいのを一つ加えて、丈は15cm長めに変更。見返しやら何やらで、パーツのこまごまと多いのには少々の不安も混じったものの、袖付けと襟廻りの幾箇所を除けば、殆どが直線縫いだけであるので、私の頼り無い腕でも何とか様になった。良いのか悪いのか、店が暇だったこともあり一日で完成。今日には早速、是を羽織って仕事に入ったが、実に勝手が宜しい。


・・・と、本来ならば完成品を載せたいところであるのだが、
誰かの携帯電話を借りるのが面倒だったので、省略。 (悪しからず)
その代わりに以下参考、と云うことでご勘弁願いたい。
      ↓↓↓↓


左端のあんちゃんの着て居るのが、そう。
しかし仕事着ってのは、カタログでモデルが着ると云うと違和感たっぷりで、可笑しい。どうにも胡散臭い(笑)。


こちら些か新品ぽいが、普通のおっちゃんが着て居るだけに違和感が無い。ワッペン付きと云うのも宜しいかと。


で。


只の草臥れた作業着もGVSの手にかかると、あら素敵〜。
着る人が着る人なら、こうも垢抜けるものなのねぇ。

*1:このワークコート。どうやら我が国では、古着にしろ新品にしろ、実際の作業用と云うよりも、むしろオサレ着として流通して居る風と見える。

*2:「プリンセスブルー」 と云う色らしい。

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