双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

北の国から’75

|映画|


日本映画専門CHにて放映中の神代辰巳特集。1975年 『アフリカの光』 を観る。
ショーケンと邦衛の二人連れが、アフリカへ行く!と云う大きな夢だけを持って、或る冬、何処か北国の漁師町へやって来る。ここで一冬過ごして旅費を貯め、やがて春の訪れと共に戻って来るマグロ漁船に乗せて貰えば、アフリカへ行けると考えてのことなのだけれども、そもそもが、どうしてアフリカであるのか?何故アフリカへ行きたいのか?と云ったよな事柄は終いまで語られない。しかし是がまた、実に良い映画だったんだなぁ。
所詮余所者である二人は、地元の漁師たちから相手にされず、何とか雇って貰った小さなイカ釣り船で働くことになる。狭っこい一間で寝起きし、仕事は想像以上にきつい。早々と音を上げたショーケンは、色っぽい仲になったホステスの桃井かおりの口利きで、藤竜也の仕切る賭場に仕事を鞍替え。一方の邦衛は頑としてイカ釣り船で働き続け、二人の間柄もいがいがとなってくる。その内に、過労が祟った邦衛がとうとう倒れてしまうのだが、何だかもう、邦衛が倒れてからのショーケンと云うのが、実に甲斐甲斐しく邦衛を看るんだねぇ(笑)。だっこにおんぶ。おでこをくっ付けて熱を計る。果ては、粗相をした股引を脱がしてやる。まるで邦衛がどうかしたら、アフリカ行きの夢も一緒に潰えてしまう、とでも云うみたいに。
身体を壊した邦衛が去ってからのショーケンは、時報に合わせて意味も無く放屁したりして、只独りで毎日を持て余して居る。空っぽになってしまったことを、あえて考えないよにして居るみたいで、是が妙に切ない。ついに待ちに待った春が来て、アフリカだ!と意気揚揚。ところが邦衛に手紙を書くも返事は来ないわ、藤竜也絡みだと云うのでマグロ漁船には乗せて貰えないわ、終いにはリンチを受けるわで、行き所の無い怒りを、邦衛へ宛てた手紙にぶつけるのだけれども、やっぱり切ないんだなぁ。
そして、劇中に流れる音楽がまた良いのだ。折れる苦さだとか侘しさ、憤りをバネに、歯を食いしばって立向かう訳でも無く、何と無くズルズルと状況に流されながら、けれど俺たちにゃアフリカが在るさと、ともすると根拠の無い無邪気な夢だけが支えているかのよな、どんより冴えない腰掛けの日常に、光がすうと射し込んで来るみたいで。似たよなシチュエイションから、やはり 『真夜中のカウボーイ』 辺りを浮かべる人も多いかも知れないが、こちらの方が何処か飄々として居て、きゅうとした遣る瀬無さの中にも、とぼけたおかしみが在って。観終えて暫し、清々しさと切なさとの入り交じったよな、何とも云えぬ後味の残るロード・ムーヴィー。

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