双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

誰も知らない

|縷々|

偏屈の強情張りが、不器用なりに
差し出した手は、さっと払われた。
一度目も。二度目も。云い訳は、
言葉になる機会を与えられぬまま、
目の前で只、ぴしゃりと冷たく閉ざされた。
そもそも、云い訳は只の云い訳なのだな。
己で自身の無能を重々知りつつも、しかし
それをまともに噛み締めてしまったら、
どうして笑って生きられよう。だから。
しらばっくれて、知らぬふりをすることで。
私には何か。私でなければならぬ理由が在ると、
そう想うことで、今までを過ごしてきたんだ。
あなたはどうしようも無い人間だと、敬意を払う
価値の無い人間なのだと、冷やかな目に
言葉無く云われたよな気がしてさ。けれど。
確かに私は、どうしようも無く愚かな人間かも
知れないけれど、それでも。ほんの僅かでも
構わないから、小さな敬意を払って欲しかった
だけなんだ。私の度量は大きいどころか、実に
ちっぽけで。容易く赦せたなら良いのにね。


誰にも告げずに。
朝が来たら、ひょいと何処か遠くへ旅に出てしまいたい。
尤も。それができるなら、とっくにそうして居るか。

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