双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

機微

|雑記|


師走を肌で感じられぬ寂しさよ。
時勢は年々、こうした季節季節の佇まいを
失ってゆく。冬には冬の。師走には師走の。
目には見えぬ其々の手触り、匂い。
其々との向き合い方が、心づもりが。
日々の営みの中に、嗚呼。もうそんな季節か
と感じ入ることのできる、そう云う何気無い
あれこれが、確かに在った筈だのに。
そうしたささやかな移ろいは、いつの間にか。
予め用意された模造の季節に埋もれてしまった。
ならばこうして窓を開け、心を澄ませよう。
硝子戸一枚を隔てて、季節は其処に在る。
も少し経ったら、交わす挨拶の終わりに
私は 「良いお年を。」と加えることだろう。
漬けた柚子に湯を注し。煤を払うことだろう。


|電視|


『NNN ドキュメント’09』が良かった。
小さな港町の、小さなお好み焼き屋と、
其処へ集まるご近所さんたちの、小さな物語。
ご近所さんは大方が独り住いの老人たち。
それを見守る、元気で世話好きのおかみさん。
味岡のお爺さんが、娘さんと暮らすために街を去った。
僅か道幅2M程の店の前は、車の通行に不便と云う
理由から、道路の拡張工事が決定し、店向かい八軒の
立ち退き取壊しが始まって、狭い路地は立派になった。
町を去る人。新たに来る人。通りの風景が随分と
変わってしまっても、店は変わらず其処に在る。
四百円のお好み焼きと、皆のおしゃべりと。

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