|小僧先生|
お泊りに来た小僧先生とAちゃんと三人、
先生の持参した花火などして、夜を涼む。
ずっと以前に買って貰ったのを、一夏の間
大事にとっておいたらしく、幾つかは湿気て
火がつかなかったけれど、最後に残した
線香花火を、先生は一番のお気に入りと云う。
「先生はどうして線香花火が良いのですか?」
「ふむ。何しろ火花の小さいのが良い。それに…」
「それに?」
「それに、この小さな玉ころが最後にぽとん、と。」
三人して横並びに、同じ格好でしゃがみ込み、
各々、最後の線香花火をじいと見詰めて居た。
「先生。夏は納めましたか?」
「さあ、納めたのかね。君はどう想う?」