双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

ブカブカシマシマ

|モノ|

季節の抽斗の入換えで、毎回気付くことなのだが、
紺、グレー、茶と、無地の地味さは云わずもがな。
柄物は、シャツの格子や縦縞を幾つかを除くと、
実にシマシマ。ボーダー柄ばかりなのだなぁ。
秋に入れば、ボーダーのTシャツにコーデュロイ
のズボンと云うのも、随分と長いこと相変わらず。
新たに買い足すことが在っても、いつもの調子で
選んでしまうから、結局抽斗の中は変わらない。
しかも、こと寸法に関しては、ぴたっとしたのが
どうにも苦手で、シャツからスボンから。大抵の
ものは大きめを良しとして居る。これも変わらない。
ところが近頃の洋服ときたら、実に不感心なことに、
おしなべてぴたっと、身体の線の出るのが主流と見え、
たかだかTシャツ一枚取っても、胴の両脇がきゅっと
絞ってあったり、袖は小さ過ぎたり短か過ぎたり。
すとんとした”只のTシャツ”を見付けるのにも
実に難儀する。その上、規格や寸法と云うのにも
流行が在るらしく、どれもこれも端から小さく拵えて
あるから、私のよな者には全く困ったものなのだ。


あれはいつ頃だったかな。高校生の頃だったろか。
『なまいきシャルロット』 を観て、彼女の着て居た
ブッカブカのあのボーダーシャツが、ひどく素敵に
映ったのだけれど、想えばあれが、そもそもの始まり
だったのではないかしら。抽斗のシマシマは、丸首に
とっくりにと、其々種類も違って居るけれど、こと
船首のボーダーシャツへの親しみと云うのは、きっと。
あの映画の鮮烈な印象が在るから、なのだと想う。
無難だから選ぶのじゃない。時流に振り回されぬ
頑なさと、二色の線の潔さ。やはり其処なんだな。
無愛想と見えるところも在るが、化粧っ気も無く、
さばさばとした気性で、何だか妙に気の合う奴。
海は海でも、のぺっとしたリゾートじゃない。
びゅうびゅう風の叩きつける、荒海のタフさか。


ふと想い出して、十五年程前に撮った写真を見てみた。
見目こそ随分と若かったものの、其処で着て居たのは、
やっぱり。ブカっとシマシマコーデュロイだった。


|映画|


なまいきシャルロット ニューマスター版 [DVD]

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当時観たときには、完全にシャルロット目線だった
のだと想う。ルルは何かと面倒くさくて邪魔だし、
青年も只の不良だし。大人は何も分かってくれない!
でも今になって冷静に考えると、やっぱりあれは
シャルロットがいけないよなぁ(笑)。ルルの云うことも
おばさんの云うことも正しいし、あの青年だってちいとも
不良じゃないんだよな。それなりに夢も希望も持って居て、
大切な地球儀まで壊されて、かえって気の毒なくらいだ。
天才少女の付き人の話にしても、シャルロットが勝手に
妄想を膨らまして居るだけなので…。嗚呼。
独りで勝手にむしゃくしゃして、拗ねて、悪態ついて。
けれど、ああ云う膨れっ面の季節と云うか、人には
あの可愛気の欠片も無い時期が、実は大切なのだな。
大人になってから観てみると、結構ヒリヒリと痛い。

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