双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

朧月

|雑記|


携帯電話であれ会って話すのであれ、大きな声を憚らぬ
人と云うのは、いったい、他人に話の内容を聞かれたり、
測られたりすると云うことに、只無防備なだけであるのか。
それとも、日頃より耳の聞こえが悪いだけであるのか。
何れにせよ、どうして平気なものかしら、などと想う。


新聞を広げて目を落としたところに、老人の性について
書かれた記事が在った。何想うでも無く。つらつらと
字面を追う。字面を追って、ひとつ。溜息のよなものをつく。
恐らく、無為の。ひとつついて、深く吸い込む。


「朧月だね。」 と声を聞き、何故だか外を見ぬまま
「そうね。」 と返事する。ややあって外を見ると、
夏の夜に。ひどく朧な月が、うすうすと浮かんで居た。*1
暫しの間、それを眺めた後で、同じくうすうすと。
鳩尾に疼きはじめる気配を、そっと収めた。


|音|


夜、森へ行く。

バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1955年モノラル録音)

バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1955年モノラル録音)

*1:春じゃないけれど。

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