双六二等兵

ポッケにさすらい 心に旅を 日々を彷徨う一兵卒の雑記帖

珈琲少年予備軍

|日々|


数日前のこと。近くの小学校が創立記念日
休校だったらしく、小学生の男子が三人。
おじいちゃんと思しき男性と一緒にやって来た。
その内の一人は、ついこの間の日曜に、母親や
姉らと来店した少年である。おじいちゃん曰く、
どうしても行きたいから、連れて行って欲しいと
頼まれたとのこと。ふむふむ、なるほど。
珈琲の代わりに、オレンジジュースではあるが、
珈琲少年予備軍、と云う訳か。この年頃の少年ら
などと云うものは、大概が騒々しくて、落ち着きの
無いものと、相場が決まって居るものだけれど、
三人とも静かに寛いで居り、注文を持って行った際に、
ちらと覗き見たところ、一人はポルトガルの食紀行。
一人はパリ散策。一人は古本屋紀行。等など。
凡そ、この年齢に似つかわしからぬ、渋い選択だが、
かと云って、単なる興味本位と云う風でも無さそうで、
読みたいから読むのです、と云う厳かな佇まい。
各々が本棚より本を幾つか持って来て、思い思いに
読み憩って居る様など、実に素敵な光景ではないか。
一方、本家珈琲少年は、中学校の部活動に忙しいらしく、
数週間前の休日だったろか。表へゴミ出しに出た際に、
遅刻でもしそうだったと見えて、道の向こう側を、
猛烈な勢いで走って居たのだが、こちらに気付くと、
「こんにちは!最近忙しくって!!」 と、大きな
スポーツバッグを振り回しながら、びゅんと走り去った。
友人のエンドー同様、彼もテニス部なのかも知れぬ。
さて。珈琲少年予備軍たちである。思うだけ憩って、
いざ会計の折。三人其々に財布を取りすと、各々の
お小遣いの中から支払うのだと云う。小学生らしい
ナイロン素材の財布から、小銭を一枚ずつ取り出す姿に、
微笑ましいよな、何ともあったかな心持ちとなった。
帰り際 「ご馳走様でした。」 と、控えめにぺこり
頭を下げ、おじいちゃんの車に乗り込む少年ら。
嗚呼、有難う。またいらっしゃい。

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